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おすすめ図書 2015年
12月
チョコレートコスモス(角川文庫)
恩田陸/著 角川書店
芸能一家に生まれ、子役の頃から役者として活躍してきた響子。恵まれた環境と才能を持ちながらも、自ら選択して進んだ道ではなく、このままでいいのか人知れず苦悩しています。
そんな響子の芝居を観て〝舞台の暗がりの向こうに何があるのか〟に興味を抱いた飛鳥は、大学の演劇サークルに加入します。並外れた観察力と発想力で周囲を驚かせますが、本人にはすごいことをやっているという自覚は全くないのでした。
それぞれの場所で日々を過ごしていた二人は、伝説のプロデューサー・芹澤が手掛ける芝居のオーディションをきっかけに巡り合うことになります。互いの才能がぶつかり合う中、響子と飛鳥が舞台の上で見た景色とは…。
響子、飛鳥の他に脚本家の神谷、飛鳥の先輩である巽、演出家の小松崎など個性あふれる人物が登場します。
様々な人の才能と努力によって出来上がっている芝居の世界。読了後にぜひ劇場で生の芝居を堪能してみてはいかがでしょうか。(成田図書館作成)
11月
パラリンピック物語
土方正志/文 奥野安彦/写真 リトル・モア
パラリンピックを目指すアスリート達は、生まれつき障がいがある方と思われがちですが、元健常者の方がいらっしゃいます。健常者が突然、病気や事故によって障がい者となり、人生の絶望を味わいながらも障がい者スポーツを始め、障がい者スポーツと出会い、大きく人生が変わり、「パラリンピック」を目指す輝かしい人生が開けた話です。
主に1996年アトランタパラリンピックの「車いすマラソン」で銀メダルを獲得した宝塚一也さんの話が中心に展開され、障がいを持ったアスリート達の熱いドラマが盛り沢山収められています。
そして障がい者スポーツやパラリンピックは、健常者と障がい者がお互いに協力し合い、また助け合いながら行う感動する話でもあります。
2020年東京で行う、オリンピック・パラリンピックにも通じるものがあるかと思います。(宮前図書館作成)
10月
くさい食べもの大全
小泉武夫/著 東京堂出版
紹介されている食べものは、地球上で最も強烈なにおいを持った食べものといわれるスウェーデンのシュール・ストレミングに代表される魚介類から、魚醤、肉類、そして私たちにも身近な納豆、チーズ、漬物類など。これらをただ「くさい食べもの」として紹介するだけではなく、なぜそれがその土地で発祥したのか、地元でどのように食べられてきたのかという、歴史的、文化的背景について解説しています。
また、そのくさいものを食べたときのエピソードも生々しく語られ、とても興味深く読み進められます。著者が語るところの、まさに「経験に基づいた生ぐさい内容」となっています。さらに、それぞれの食品の「くささ」度合いによって、小泉先生が、星の数で五段階評価を行っているのも、遊び心が感じられて面白いと思います。
筆者がこのようなくさい食品や料理を、あえて紹介するのには、この本を通して、一人でも多くの人たちに、くさいものの魅力を伝え、摂取してもらいたいという思い、またそれが、人の身体や人間性にもよい影響を与える必要不可欠なものであるとの信念からなのでしょう。ぜひこの機会に、恐れることなく、コイズミワールドに触れてみてはいかがでしょうか。(高円寺図書館作成)
9月
ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。
大河内博/著 集英社インターナショナル
この本の著者は、経済産業省に勤務していましたが、思いがけず、ブルネイにある日本大使館の二等書記官として赴任することになりました。「ブルネイと日本の架け橋になる!」という使命感を胸に現地に赴きましたが、この国独特の「閉鎖社会の壁」にぶち当たって仕事は何ひとつうまく行かず、おまけに上司からのパワハラにもあって暗い日々の連続でした。そんな中、せめてストレスの解消にと中学時代に熱中していたバドミントンをはじめたところ、地域の人たちだけでなく大臣やブルネイ王室の王族とまで知り合いになり、「壁」が開けて仕事もうまく回り出したのです。それにしても、何故バドミントンなのでしょう?その訳は…。本書は、バドミントンをきっかけに国際交流に尽力した外交官の涙あり笑いありの滞在記であり、ブルネイを知る手掛かりにもなる一冊です。(柿木図書館作成)
8月
今日から歩ける! 超入門 山城へGO!
萩原さちこ/著 西股総生/著 学研パブリッシング
紹介している城は、スニーカーで気軽に行ける首都圏近郊の城から、本格的な山城まで、全国32城。公共交通機関で行きやすい城が多く、都内では、板橋区の赤塚城や、調布市の深大寺城、八王子市の片倉城などが紹介されています。各城の基本的な情報や見どころ、縄張り図(城の平面図)など、実際に歩く時に役立つ情報のほか、用語の解説もあるので、歴史や地理に詳しくなくても安心。かわいらしいイラストやカラー写真も多く、城を愛する著者たちの軽やかな語り口も楽しい一冊です。
天守などが残る華やかな城は少ないですが、「地形を駆使した戦うための城」の魅力を実感できると思います。本書をお供に実際に城を歩いて、自分だったらこの城をどう攻めるか、逆に、どう守るのか、イメージしてみてはいかがでしょうか。(中央図書館作成)
7月
エネルギーとはなにか そのエッセンスがゼロからわかる
ロジャー・G・ニュートン/著 東辻千枝子/訳 講談社
6月
芸者論 花柳界の記憶(文春文庫)
岩下尚史/著 文藝春秋
単行本タイトルが示す通り、本書は巫女から続く芸者全般の系譜がひもとかれているが、岩下が実際に新橋界隈で多くの芸者と知遇を得るなか著された本書では、歴史上の芸者の姿が、数多の研究書よりも断然生き生きと活写されている。なかでも、明治の元勲をその才気と教養で支えた新橋芸者の項は、歴史好きにも新たな視点を促すのではと思うほど新鮮だ。多くの研究書が芸者を娼妓に準じたものと曖昧なままにしているなか、本書では、新橋芸者の「芸のみで立つ」矜持がしっかりと描かれる。
日本の伝統文化である「芸者」の世界。日本人なのに「フジヤマ、ゲイシャ」並みの知識しかないと気づいたら、ぜひ手にとってほしい一冊だ。(今川図書館作成)
5月
凍
沢木耕太郎/著 新潮社
ギャチュンカンとは、チベットの言葉で「千の谷が集まる雪山」という意味を持つ標高7952メートルの山です。
山野井夫妻はこの氷と雪の山に挑んでいきます。過酷な状況の中、妙子は体調不良で登頂を断念しますが、泰史は単独で登頂に成功しました。しかし、困難はこの後待ち受けていました。下山途中、雪崩に巻き込まれた二人は、低酸素のため目が見えにくくなる中、再び襲ってくる雪崩、手足の激しい凍傷、宙吊りの状態で夜を明かすなど壮絶な体験をしていきます。二人は「死」と紙一重の状況を乗り越えていきます。
読み進んでいくごとに、二人の体力、精神力、相手への強い信頼に圧倒されます。登山に関心がないという方にもおすすめしたい一冊です。(中央図書館作成)
4月
つくもがみ、遊ぼうよ
畠中恵/著 角川書店
『しゃばけ』は読んだけれどほかのシリーズは読んでないという方は、この『つくもがみ』シリーズが読みやすいのではないでしょうか。『しゃばけ』とはまた違った妖怪たちが登場します。
大切にされて百年以上使われた物は魂がやどり、付喪神(つくもがみ)という妖怪になることがあるそうです。古道具屋兼損料屋(損料屋とは、鍋、釜、布団、着物、などなどさまざまな品をいくらかで客に貸し出す商いのこと)の出雲屋には、そんな付喪神がたくさんいます。前作『つくもがみ貸します』は、損料屋としてつくもがみをお客さんに貸し出し騒動を引き起こすというお話でしたが、今作では出雲屋の息子の十夜と、幼馴染の市助、こゆりの3人が、新しく出雲屋にやってきた絵双六の付喪神・そう六に絵双六のなかに閉じ込められてしまいます。そこで双六をすることになるのですが、ルールは賽を振って止まったマスにいる付喪神とそこに描かれている遊びをし、勝たないと上がれないというもの。
江戸中の事件も絡んで、子供たちと付喪神連の愉快な知恵くらべがはじまります。(方南図書館作成)
3月
重力ピエロ
伊坂幸太郎/著 新潮社
強姦、放火、殺人、ストーカー、泥棒、探偵、ミステリー要素の単語がでてくるが、最強の家族の話であると思っている。
強姦によって生まれた弟と半分血がつながっている兄、癌を患う父と美しい母の家族の話である。
2人が住んでいる町に連続放火事件が起こる。犯行現場には謎の落書きがあり、落書き消しを仕事とする弟と、連続放火の犯行現場となってしまう遺伝子を扱う会社に勤めている兄が謎を解いていく。謎を解きながらもこの家族の過去が大きく関わっている事に気付く。そして過去の家族の思い出と現在の出来事がリンクしていく。
伊坂幸太郎の作品の大半は、ものスゴイことがさらっと起こります。
そして、さらっと流れた後に何度も読み返したくなる言葉で溢れています。
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」
そう語る弟の言葉が、この作品を印象付けています。(高井戸図書館作成)
2月
広辞苑を3倍楽しむ
岩波書店編集部/編 岩波書店
この本には、広辞苑に掲載されている言葉と、カラー写真、エッセイが見開きごとに一項目収められています。収録数は50項目と、広辞苑24万語の中の極一部にすぎません。ところが、この本に載っている美しい写真とエッセイには、辞典だけではわからない様々な知識が詰め込まれています。「うつぼかずら」という食虫植物をご存知でしょうか。その消化液は飲むことができるそうです。「でんぐりがえし」の項目にはどんな写真が載っていると思いますか。きっと意外に思うはずですよ。
辞典に載っている言葉を、もっと詳しく知りたい。そんな思いを抱かせてくれる本です。(下井草図書館作成)
1月
おかしな本棚
クラフト・エヴィング商會/著 朝日新聞出版
クラフト・エヴィング商會は、吉田篤弘と吉田浩美の夫婦二人組。「ないもの、あります」の看板を掲げた小さな店のイメージで「作品」と「デザイン」の二兎を追い、手がけた装幀デザインは千点を超える。吉田篤弘さんの本棚の本を惜しげもなく覗かせてくれるこの本は、本の本ではなく本棚のあれこれを考える本。
たとえば「ある日の本棚」。今読んでいる本とこれから読むつもりの本、なかなか読めずにいる本が並ぶ。解放的な気分で仕事を忘れ、本の世界に没頭する「金曜日の夜の本棚」。遠いところは本を読んで行ったことにする「旅する本棚」。「変身する本棚」には、カフカの『変身』の文庫がズラリ。「年齢のある本棚」「うるわしい本棚」「いつまでも読んでいたい本棚」「寝しなの本棚」などなど。本については基本的に背の写真と、必要最低限の情報のみ。古書店の棚を眺めるように自分の勘だけを頼りに向き合う、ガイドブックとしては異色の一冊。(南荻窪図書館作成)
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