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おすすめ図書 2022年

12月

若葉荘の暮らし

若葉荘の暮らし

畑野智美  小学館 

新型コロナウィルス感染症の拡大が長期化し、3回目の「冬の流行」の時期を迎えようとしています。本書は、コロナ感染症の流行から2年過ぎた2021年、「ひとりで眠れない夜、誰かと暮らすことを願った」作者の夢を詰め込んで書かれました。
物語は、感染症の影響でアルバイト先の洋食店の売上が減少して収入が減り、マンションからの退出を余儀なくされた40歳のミチルが、高齢の管理人・トキ子が営む、40歳以上の女性限定のシェアハウス「若葉荘」を訪れる所から始まります。40代から70代以上の4人の女性との同居生活、洋食店の人間模様など、緩やかな日常と人々との交流の中でミチルは諦めていた自分の人生の幸せに向かって再び歩き始めます。
各々事情を抱え、傷つきながらも懸命に生きてきた女性達の相互扶助と癒しが「若葉荘」にはあり、女性の貧困、就職氷河期、非正規労働者、男女雇用機会均等、婚姻制度、高齢化社会、LGBTなど多様な日本の社会問題が、作品の中で軽やかに問題提起され、人との繋がりについて再考させられます。
コロナ禍の後の世界をどう生きるかについて、多くの人が考える今だからこそ共感できるストーリーです。
(西荻図書館作成)

11月

お白洲から見る江戸時代 「身分の上下」はどう可視化されたか

お白洲から見る江戸時代 「身分の上下」はどう可視化されたか

尾脇秀和  NHK出版

「お白洲」といえば、時代劇での「お裁きの場」のイメージがあります。ドラマのクライマックスでは、悪事が暴かれ正義が勝つ、「これにて一件落着!」の決め台詞が響き渡る勧善懲悪の舞台。
しかし本当のところはどうだったのでしょうか? 
実際はドラマとは違い、また現代の法廷とも大きく異なる場所だったようです。お白洲では法の下の平等は存在せず、裁かれ方に身分の上下による明確な差がありました。奉行所の役人にとってやっかいなのは、この身分の見極めでした。百姓が武家家来の身分「士」になることもあれば、伊勢の御師(おんし)など、神職の一種であり庶民でもあるという二面性をもつ者、山伏にいたっては半僧半俗であるがゆえ、僧寄りであれば上、庶民寄りであれば下とみなされる場合がありました。
本書はお白州の歴史とともに、身分の見極めに苦悩する役人を通して、幕府が守ろうとした秩序の一端を垣間見ることができます。お白州の姿と江戸の身分制度のイメージが変わる一冊です。(成田図書館作成)

10月

あの人たちが本を焼いた日

あの人たちが本を焼いた日

ジーン・リース/著 西崎 憲/編 安藤しを 他/訳  亜紀書房

わたしはどこにも属していないし、属すためのやりかたを買うお金もない。
 
1890年、ジーン・リースはカリブ海に浮かぶイギリス領ドミニカ島に生まれる。演劇を志し、アカデミー・オブ・ドラマティック・アートに進むが、中途で挫折。1927年にデビュー作『セーヌ左岸およびその他の短篇』を刊行。『カルテット』など長篇の評価は高かったが、次第に忘れられた作家となる。40年代後半に『真夜中よ、おはよう』がラジオドラマ化されて、それを期に復活。60代で代表作『サルガッソーの広い海』を発表し、作家としての評価を決定的なものにする。終生波乱と困窮と飲酒に彩られた人生を送った。
 
リースは、ヨーロッパで居場所を見出せず疎外された人であった。しかも女性である。この物語に出てくるのは、そんな自身の波乱に富んだ人生を下敷きにしたモデル、老女、放浪者など、困窮、飲酒、刑務所暮らし、戦争、と数々の困難を生きている主人公たちである。

だが彼女らはけっして下を向かない。慣習と怠惰と固定観念をあざ笑うように、したたかに生きる。いま新たな光を浴びる、反逆者リースの珠玉の作品集である。(宮前図書館作成)

9月

北斎になりすました女 葛飾応為伝

北斎になりすました女 葛飾応為伝

檀 乃歩也  講談社

 江戸時代の天才画家・葛飾北斎の名は日本のみならず、海外にも知れ渡っています。本書はその葛飾北斎の娘・応為(おうい)の謎に満ちた生涯を描いたものです。
 応為は父・北斎同様に画家ですが、北斎の作品の中に応為が手伝っているものがあるようです。さらに、驚くことに北斎晩年(80代)の作品の多くが実は応為との共作だったのではないかという説も紹介しています(この説自体は以前からあるようです)。
 北斎自身、応為について「美人画を描かせたら俺より上手い」と言っていたようですが、それほどの技量の持ち主がなぜ歴史の闇の中に消えて行ってしまったのか・・その理由を本書はていねいに説明していきます(応為自身の署名が入った作品の数も少ない)。
 今後、北斎や応為についての新たな事実が出てくるかもしれませんが、それまでは本書を読みこの歴史ミステリーについて思いを巡らせるのも楽しいと思います。
(高円寺図書館作成)

8月

シニアバス旅のすすめ 定番コースからワンランク上の大人旅

シニアバス旅のすすめ 定番コースからワンランク上の大人旅

加藤 佳一  平凡社

出発の時刻から運転手さんやガイドさんの対応の様子、その土地土地の美味しいものや風景などこと細かに描写されている。読む者をウキウキとさせ、いますぐにでもバスに乗って旅に出たい気分にさせられる。観光地を巡る定番コースから、一日乗車券などのフリー切符を使った日帰り旅、個室完備の高級バスで行くワンランク上の上質旅まで様々なバスの旅を提案している。シニアの方もシニアではない方も、マイカーやレンタカーでは感じられない、その土地ならではの空気を感じるためにバスの旅に出かけてみてはいかがですか?(柿木図書館作成)

7月

クジラアタマの王様

クジラアタマの王様

伊坂幸太郎  NHK出版

中堅お菓子メーカーに勤めるサラリーマンの岸(きし)。お客様サポートの部署をすでに離れていたが、自社が手がけるマシュマロの中に画鋲が混入していたというクレームへの対応をするため、かつて自身が属していた部署に急遽呼び戻される。
当初はクレーム対応のピンチヒッターくらいに考えていた岸だが、この件に端を発した想像を遥かに超える大騒動のうねりへと巻き込まれていく。そのさなか、テレビ画面に映るだけで輝度が増すようにも感じられる容姿で、女子高生を中心に大人気のダンスグループに所属する小沢(おざわ)ヒジリ、日本各地に愛人を持つも、国民からの好感度が高く、政策については国民のためを第一に考える、実直で精悍な都議会議員の池野内 征爾(いけのうち せいじ)らと出会う。一見、何の接点も共通点もない、この三者の邂逅を機に運命は予期せぬ方向へと大きく動き始める。
自分がまるで違う世界で生きているかのような奇妙な夢、八年前に起きた金沢での火事、理由は不明だが何故か既視感のあるハシビロコウ、幼少期の辛い記憶、蔓延する新型ウイルス、そして過剰なまでに熱を帯び始めるマスコミ報道…、謎が謎を呼び、やがて世界の命運を揺るがすほどに騒動は混迷を極める。事態の収束と謎の解明のため奔走する三人。全てのピースが揃うとき、そこにあるのは希望か…はたまた絶望か…。(永福図書館作成)
 
牧野富太郎 植物博士の人生図鑑

牧野富太郎 植物博士の人生図鑑

コロナ・ブックス編集部編  平凡社

40万もの植物標本をつくり、1500種類の植物を命名した日本の植物学の父、牧野富太郎のビジュアル版自叙伝です。
博士の著作からの言葉と、プライベートの写真や、植物図、年譜もあり、読みやすく、博士の生涯が一冊でたどれます。

 植物博士というと、一人黙々と観察をし、寡黙な印象ですが、写真の博士は笑顔も多く、生徒と思われる数人を連れ実地調査をしている姿からも、決して孤独な作業ではなく、仲間たちと好きなことを楽しそうに貫いた姿がうかがえます。
 博士が経済的に苦境に立ち、収集した書物や標本を手放さざるを得なくなったときには、研究を続けられるように負債の肩代わりし、膨大な標本を保管してくれるひとがあらわれたりと、人に支えられたエピソードも多く紹介されており、愛された人柄がしのばれます。
 
この本は、ビジュアル版ということで、博士の手による植物図も多く掲載されています。
植物図鑑等で、見たことがある人も多いことでしょう。
これらの図は、緻密で正確なのはもちろん、なにより、幾何学的でデザイン画のように美しく、見飽きません。
また、これらを、習ったことがなく独学で生み出したということにも驚きます。
 
読んだ後は、庭先や街路樹、公園で見かける草花が目に留まるようになります。(中央図書館作成)
 

5月

異名・ニックネーム辞典

異名・ニックネーム辞典

杉村喜光/編著  三省堂

著者の個性から名づけられ愛称になることもある「ニックネーム」。動植物や地域を見た目などの特徴から名づけられた「異名」。それらの意味や由来を雑学系ライターの杉村喜光が編纂した6548項目からなる異名・ニックネームが収録された辞典である。
辞典といえば調べ物に用いる書物として使われることが多いが、本書は調べるだけでなく見出しにあたる異名・ニックネームを楽しむ用途としても活用できる。見出しによっては複数の異名・ニックネームがあり、その見出しに関する歴史や豆知識を違った角度から深められる。また、人名では歴史上の人物や懐かしの芸能人やスポーツ選手から今話題の人まで載っているので探してみてほしい。
収録されているジャンルが豊富であり、数多くの雑学を気軽に習得できるので、ぜひ手に取って辞典の中身を眺めていただきたい。 (中央図書館作成)

4月

その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。

その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。

山本 貴光、吉川 浩満/著  筑摩書房

 エピクテトスという人をご存知でしょうか。古代ローマに生きたギリシア人で、ストア派に分類される哲学者です。波乱万丈な人生を歩んだエピクテトスは自身で著作は残さなかったものの、その言葉を弟子が記録し『人生談義』として現代日本にまで伝わっています。本書はその『人生談義』の思想を、様々な悩み事に当てはめて考えていきます。古代人の「私は便器を捧げ持つべきですか」や「どうして私が首を切られなければならないのですか」という問いから、現代では年下上司に悩む30代男性からの相談、中学・高校生の進路選択まで様々な悩みが考察されています。果たして、古代の大賢人の教えは現代に生きる人々の悩み解決の助けとなるのでしょうか?
 哲学書は難しくて苦手という方も安心してください。本書は主に著者二人の対話形式で構成されているので読みやすく、ストア哲学の入門書としてもおすすめです(今川図書館作成)。

3月

終電の神様

終電の神様

阿川 大樹  実業之日本社

例えば、たまたま声をかけた人が親友になったり、偶然通りがかったタクシーを捕まえて会議に間に合うことがあったり、誰の人生にも「運命の一瞬」があると思います。むしろ、そんな一瞬の連続が人生と言えるかもしれません。
人身事故のせいで停車した電車に乗っていた、あるいは事故の起きた駅に関わっている、年齢も性別も異なる7人が主人公の、7つの物語。
「事故が起こり、その影響で走行中の電車がしばらく停車した」。シチュエーションを言葉にすれば、たったそれだけのこと。しかし、数十分電車が止まったがために、ある人は大事なことを忘れ、ある人は出会うはずのなかった人に出会い、ある人はその後の大切な時間が削られてしまいます。一見ネガティブなそれらの出来事を、神様はいるのかもしれないと思わせるほどに、鮮やかな結末に着地させる手腕は見事です。それぞれの物語を読みながら、あなたの人生の運命の一瞬にも思いを馳せてみませんか(方南図書館作成)。

2月

英語の教養 英米の文化と背景がわかるビジュアル英語博物誌

英語の教養 英米の文化と背景がわかるビジュアル英語博物誌

大井光隆 /著  ベレ出版

英米文学などを読んでいる時に、全く意味がわからない言い回しに直面したり、ネイティブのように英語圏の文化的背景に関する知識や、英文学などの教養があればわかったのかもしれない、と思ったりしたことはないでしょうか。このような知識は一朝一夕で身につけられるものではありません。そんな時の悩みに答えてくれるのがこの本です。
本書では、神話に関するものからミッキーマウスなどの近代のものに至るまで、様々なジャンルに関する英単語が取り上げられています。そしてそれらの英単語の一般的な意味合いの解説に加え、英語圏特有のシンボル的イメージ、更にはその単語を使用したことわざ・慣用句などを紹介しています。
他の文学作品を読む際のサポートとしてだけではなく、この1冊だけでも十分読み物として楽しめる内容となっていますので、是非一度お手に取ってご覧ください(高井戸図書館作成)。

1月

バンクシー

バンクシー

ジョン・ブランドラー/著 アレッサンドラ・マッタンザ/著 高橋 佳奈子/訳  新星出版社

 サザビーズオークションで切り刻まれた作品を含む140点以上の、バンクシーコレクションを収録。美麗な作品写真、それだけでも十分に楽しめる、約30㎝の大型本です。
 まえがきとキャプションは、2003年からバンクシーの作品を扱い始め、かなりの数の彼の作品を所有する、有名なストリート・アートの専門家が執筆。本編は、「バンクシーでありたいのか、ありたくないのか?」「バンクシー、アーティストの肖像」「ネズミ、サル、そしてその他の風変わりな生き物たち」等のテーマに分けて作品を提示し、どのような状況で制作され、その作品や制作過程を通して、彼が何を語りたかったのかを深く掘り下げています。
バンクシーは、世界中の路上の壁や橋などに落書きを残し、今や知らない人はいないというほどに有名なストリートアーティストですが、頑固なほどに身元を隠しています。その謎めいた存在に関心のある人も、世界の人々を驚かせ魅了するその作品に興味のある人も満足できる一冊です。(下井草図書館作成)

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