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おすすめ図書 2023年

12月

できない相談

できない相談

森 絵都  筑摩書房

人生、我慢の連続ですよね。
起きたくなくても起きたり、働きたくなくても働いたり。
だからこそ自分でコントロールできる範囲だけは譲りたくない、「日常の小さな抵抗」あなたにもありませんか?
突然ですが私には「トマトは絶対最後に食べる」という自分だけのルールがあります。
サラダに入っていても、煮込まれてクタクタになっていても、溶けずにトマトの形を残しているなら食べるのは必ずご馳走様の直前です。
なぜトマトなのか?それをどうして最後に食べるのか?そこには別に理由も意味もありません。変えようと思えば変えられるし、「最初に食え」と言われればそりゃあ食べられるんですが、なぜだかそうはしたくない。
そんな「日常の小さな抵抗」がなんと38個も集まった小説集がこの「できない相談」です。森絵都さんによってユーモアに綴られた様々な日常の中の抵抗たちに人間味が溢れていてなんだか愛おしくなってくる。誰かと共有したこともないけれどきっと誰もが持っている。共感したりグサリときたりニヤニヤしたりしながら楽しんでいただきたい一冊です。
(宮前図書館作成)
 

11月

教養としての日本の城 どのように進化し、消えていったか

教養としての日本の城 どのように進化し、消えていったか

香原 斗志  平凡社

 日本の城ブームが長く続いています。城に関する本はたくさん出ていますが、本書の特色は海外からの影響に重点を置いたところにあります。詳しくは本書をお読みいただくとして、その象徴的な例として、あの有名な織田信長の安土城を挙げたいと思います。実はこれが日本初の(いわゆる一般的な城のイメージである)高い石垣があり高層の天守がそびえ立つ城となったようです。著者はそこに信長の独創性のみならず、信長は南蛮から来た宣教師との交流から得た西洋の知識を生かしたのではないかと推測します。すなわち信長はヨーロッパの城にも負けない豪華絢爛な城を作りたかったのではないか・・・何ともロマンがある説ですよね。
 さて本書は、この安土城から五稜郭まで17の日本の城を豊富な写真と共に紹介しています。各城の海外からの影響だけでなく、城が出来上がるまでの経緯やその後の歴史はとても興味深く読むことが出来ます。
 最後に、城を知ることにより日本の歴史や文化をより深く理解することが出来るようになる、という著者の主張には強い説得力があると思います。(高円寺図書館作成)

10月

本の読み方 スロー・リーディングの実践

本の読み方 スロー・リーディングの実践

平野 啓一郎/著  PHP研究所

この記事を読んでいただいている本が好きな皆さんには、今更..かもしれませんが、読書法に関する本のご紹介です。
世間では、いかに短時間で能率的にたくさんの本を読むかといったいわゆる「速読術」を紹介する本は多いと思いますが、この本は、それと対極をなす、遅読(スロー・リーディング)を薦める内容になっています。
具体的には、辞書を引いたり、前のページと行ったり来たりしたり、登場人物とわが身を置き換えてみたり、時には、本に印や傍線を付したり(図書館の本は駄目ですよ!)などすることにより、「言葉の森の奥に分け入っていく」感覚が身につくとされています。
読書法には、決して正解はありませんが、必ずや皆さんの参考になると思います。
「作品読解のページ」で実際に漱石・川端康成・カフカなどの古典に加えて、自著をテキストに具体的な読解の仕方を示しているのも本書のユニークな魅力です。
本格的な読書の秋を迎えようとする今、是非、手に取っていただきたい一冊です。
(柿木図書館作成)
 

9月

江戸の情報力

江戸の情報力

市村佑一/著  講談社

21世紀はデジタル化による「情報共有」の時代、さて江戸時代はどうだったのでしょう?
戦国の世が終わり、江戸幕府は伝達すべき情報が組織体制の指揮命令系統の流れに沿って円滑に流れていく「上意下達=タテ」のシステムを確立しました。伝達方法も、大名については、大名本人を江戸城に招集もしくは奉書での伝達から、江戸留守居を通しての伝達へと変化。町人への周知には「高札」が使われました。情報量の増大とともに、新しい手法が構築されていきました。
時代を経ると、タテだけでなく、「武士たちのパーソナル・ネットワーク」、「商人」や「蘭方医」などの私人同士=ヨコのネットワークが開花。情報発信の手法として、書籍や現代の新聞につながる「かわら版」が生まれました。などなど、本書は、日本人の情報=知の感覚が育んだ江戸の底力を検証する1冊です。(永福図書館作成)

8月

英文学者がつぶやく英語と英国文化をめぐる無駄話

英文学者がつぶやく英語と英国文化をめぐる無駄話

安藤 聡/著  平凡社

 小学生からの学習が必須となり、より身近な存在となった英語。ですが、私たちはどこか表面的に接していて、その奥深さをまだ分かっていないのかもしれません。
 本書は、英文学科で教鞭をとっている筆者が、英語やイギリスにまつわる雑学を紹介しているエッセイです。イギリス英語を深掘りしながら、英国文化について浮き彫りにしており、学習書では決して記されないような知識が多く載っています。例えば、英国で一番長い地名って何?“town”と‟city”の違いとは?日本人が上手いと感じる英語の発音方法って?英語にも階級がある?等々・・・。面倒くさくもおもしろい、そんな英語の魅力が感じられる一冊となっています。
 英語の深みにハマりたい方、英国社会を言葉の観点から見つめてみたい方にオススメです。(中央図書館作成)

7月

たんぽぽのお酒

たんぽぽのお酒

レイ・ブラットベリ/著 北山 克彦/訳  晶文社

「たんぽぽのお酒」と聞いて、どのようなイメージが浮かびますか?本書の中でそれは、夏の間に過ごしたきらめく日々を閉じ込めた、思い出の結晶のような存在として描かれています。厳しく殺風景な冬に地下室から取り出して味わうと、からだ中に鮮やかな夏の景色が広がる魔法のお酒なのです。
著者のレイ・ブラッドベリは『華氏451度』などの作品で知られるSF小説の大家ですが、本書は他の作品と異なり、彼自身が「最も個人的な作品」と語るように、少年時代を元に書かれた自伝的小説です。
主人公ダグラスが体験するエピソードの数々は、その繊細な感性によって、現実と空想が溶け合った詩情あふれる物語へと姿を変えます。
自伝的小説の魅力は、思い出の一つひとつを記憶から取り出して語る著者の視線と物語を読み進める読者の視線が重なり合うことで、まるでその思い出を自らのものとして感じられる点にあるのではないでしょうか。
ダグラスの目を通してブラッドベリが描く幻想的で輝かしいひと夏を、共に過ごしてみませんか?
(中央図書館作成)
 

6月

センス・オブ・何だあ? 感じて育つ

センス・オブ・何だあ? 感じて育つ

三宮 麻由子  福音館書店

タイトルを見て、「おやっ?」と思った人もいるのではないでしょうか。この本は、レイチェル・カーソン著書の『センス・オブ・ワンダー』をオマージュしています。カーソンの“「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない”ということをテーマに、身の回りの情報を感じ取るヒントが詰まったエッセイ集です。
例えば、あなたは匂いで四季を感じ取れますか?カップに注ぐ音で水とお湯の違いがわかりますか?
著者は、4歳のときに光と「さよなら」したけれども、日々「何だあ?」という好奇心を全開に、意識を集中させ音、匂い、手足の触覚など全身の感覚体験を積み重ね、豊かな感覚を身に着けました。著者にかかれば、料理を作るキッチンでは様々な音が溢れて、シンフォニーを奏で始めるのです。
視覚だけで判断している私たちの情報は、あまりにも少なすぎるのではないでしょうか。著者のように「感じる」アンテナを広げ、好奇心のままに日々を楽しみたいですね。(今川図書館作成)

5月

ホット・ゾーン 「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

ホット・ゾーン 「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

リチャード・プレストン/著 高見 浩/訳  飛鳥新社

かつてヴァージニア州近郊のレストンには、熱帯地域から実験用に輸入したサルを各地へ輸送する前に、感染症を防ぐ目的で一時的に留め置くための検疫所がありました。
1978年、検疫所に運ばれたサルがなんらかの病気で次々と死んでいきます。
検疫所の獣医はこの事を不審に思い、ユーサムリッド(アメリカ陸軍伝染病医学研究所)に知らせました。
検査の結果、サル達はエボラ・ウイルスに感染して死んでいることがわかりました。エボラ・ウイルスとは確立された治療法やワクチンがいまだに存在せず、感染すれば致死率50~90%にもなる病原体です。
ウイルスがサルから人間へ感染拡大することを危惧したユーサムリッドは、事態を未然に防ぐため、ジョージア州にあるCDC(疾病対策センター)に協力を要請しました。
異なる役割を持つ2つの組織は、その軋轢や枠を越えウイルスという肉眼では見えない脅威に立ち向かっていくのでした。
果たして、医療関係者や研究者たちはどのようにウイルス封じ込めを行ったのか?この本には事態の終息までが克明に記されています。
最前線でウイルスと戦う登場人物には大切な家族があり、感染と隣り合わせの状況がいかに恐ろしいものなのか、読む側に医学の知識がなくてもリアルに読み取ることができるノンフィクション作品です。(方南図書館作成)

4月

じじばばのるつぼ

じじばばのるつぼ

群ようこ  新潮社

インパクトのあるタイトルで思わず手に取った本です。
目次を見ただけでさまざまな場面の光景が浮かんできて、いずれ(?)仲間入りする自分と重ねてしまいました。
著者の鋭い観察眼で面白おかしく書かれたエッセイは、若いころの自分なら「こんなじじばばには絶対にならない」と思ったでしょうが、今は「こうならないように素直でかわいく歳を重ねていきたい」と痛感します。
それぞれの年齢層で心に届くものがあると思います。老若男女問わずぜひ読んでみてほしい1冊です。
 
高井戸図書館作成

3月

日本人の知らない日本語 なるほど~×爆笑!の日本語

日本人の知らない日本語 なるほど~×爆笑!の日本語"再発見"コミックエッセイ

蛇蔵&海野凪子/著  KADOKAWA

「日本語学校のカオスな日常をお楽しみ頂ければ幸いです」byなぎこ先生
 
 日本語教師のなぎこ先生の勤めている日本語学校に通ってくるのは、仁侠映画に感化されて来日したフランス人のマダム、はからずも武士言葉を使ってしまうイギリス人のビジネスマン、黒沢映画ファンのスウェーデン人の留学生、など一風変わった人たちばかりです。
 彼ら留学生にとって日本語独特の言い回しや単語は謎だらけで、その質問は超個性的。なぎこ先生は言葉の意味や由来についてわかりやすく説明してくれています。
 私たち日本人でもあいまいに理解していた言葉や、昔学校で習ったけど今は忘れてしまったような言葉など、あんな日本語やこんな日本語を再発見することができる素敵な一冊です。
 イラスト担当の蛇蔵さんのゆるっとしたイラストのおかげで、楽しく理解して読めるのも魅力的です。
(下井草図書館作成)

2月

まほり

まほり

高田 大介/著  KADOKAWA

 都市伝説はお好きですか?「赤マント」「口裂け女」「トイレの花子さん」など、各年代に一世を風靡した都市伝説が存在します。この本は、都市伝説じみたある逸話を主人公が解き明かしていく物語です。

 主人公の大学生・裕は、ゼミのグループ研究で「都市伝説の伝播と変容」について調べることになりました。そのグループの飲み会で「町中に貼られた二重丸の札」という話を聞き、気味の悪さと、妙に現実感のある手触りのするその話にひどく惹きつけられた裕は、二重丸の札の正体を暴くために話の舞台となっている山奥の村に行って調査を開始します…。

 図書館の郷土資料を探して調べたり、山で探索するなど、調査の場面や過程が細かく描写されており、とても読み応えがあります。また、現存する歴史的文献などを絡めた考察は、謎解きや歴史が好きな人はもちろん、そうでない人も楽しめると思います。ぜひ読んでみてくださいね。(南荻窪図書館作成)

1月

キリン解剖記

キリン解剖記

郡司芽久  ナツメ社

 子どもの頃からキリンが大好きな著者は、その研究者を目指し、大学で解剖を学びます。
哺乳類の頸椎の数は7個という体作りの基本ルールがあるが、キリンを解剖していく中で、首の構造が人間ととても同じとは思えず、キリンにしかない特徴があるのではないかと疑問を持ちます。
解剖によるマクロな視点からのアプローチだけでなく、ある仮説を立て、過去の報告書を調べたり、キリンに近いオカピの筋肉構造との比較などにより、ついに「キリンの第一胸椎は機能的には8番目の首の骨のように動く」事を証明します。
好きという純粋な気持ちから、過去の研究資料にとらわれず、解剖し、自分の目で確認していく著者。頭を使い理解していくことの大切さや、熱意が伝わってきます。そして、恩師や関係者の協力により成し遂げられた大発見に感動します。
著者は、この本を読んで、久しぶりに動物園に行ってみようと思ってもらえたら嬉しいと語っています。
(阿佐谷図書館作成)

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