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本の中のすぎなみ 2017年
12月
『石井桃子コレクション 3 新編子どもの図書館』
石井桃子/著 岩波書店
その最初の7年間の記録であるこの本が、1965年に岩波新書として出版されると、その影響のもと、各地にぞくぞくと家庭文庫が作られました。それは、一人一人の子どもと本とのかかわりを、やさしくこまやかな言葉で生き生きと書き残した、石井さんの類まれな力なくしてはできないことだったでしょう。今ではどこの図書館にも児童コーナーがありますが、その裏にどんな情熱的な働きかけがあったのかを、この本を通じて知ることができます。杉並の名誉区民でもある石井さんの生誕110周年である今年、子どもと本の来し方・行く末を考えるために、ぜひおすすめしたい一冊です。(中央図書館作成)
11月
おうちで食べたい給食ごはん 心と体がよろこぶ杉並区の給食レシピ
杉並区教育委員会/監修 イースト・プレス
この本では、杉並区の給食メニューをたっぷり紹介しています。
和食を中心に伝統的な食文化を大切にしつつ、行事食や郷土料理、世界の料理など多様な献立が組まれています。たとえば端午の節句には竹の皮に包まれた中華ちまき、七夕の時期にはあなごちらし。千葉県の漁師さんの郷土料理いわしのさんが焼き、沖縄県のイナムドゥチ、多種類のスパイスを使った本格キーマカリーは手づくりナンと一緒に。野菜もサラダ・和え物・具だくさんスープと多彩です。
また「地元野菜デー」や「国内産食材の日」をとり入れたり、季節の食材に触れたり、子どもたちの食を通じた学びも考えられていて、調理室や配膳の様子とともにその楽しそうな雰囲気がうかがえます。
本に掲載されているのは、家庭で作りやすいようにアレンジされたレシピなので、“栄養”と“愛情”が詰まった杉並の給食を、自宅で試してみませんか。
区内の図書館では、料理本の棚ではなく、杉並資料のコーナーに並んでいるので、お尋ねください。(南荻窪図書館作成)
10月
東京23話
山内マリコ/著 ポプラ社
杉並区の思い出として語られていたのは、後に荻窪に「かつら文庫」を開くことになる1人の可憐な女性、児童文学作家の石井桃子さんとの記憶でした。「阿佐ヶ谷文士村」でも有名な作家・井伏鱒二の家を訪ねてくるところから物語は始まります。
自分の生まれた町、住んでいた町にはどんな物語があるのだろうかと気になった方、たった数ページの懐かしい思い出に浸ってみてはいかがでしょうか。巻末に収録された各地域の味のあるイラスト付き紹介ページも、ぜひご覧あれ。(阿佐谷図書館作成)
9月
地形を楽しむ東京「暗渠」散歩
本田 創/編著 洋泉社
東京の山の手から武蔵野台地にかけては、以前は無数の川が流れていましたが、今ではその大部分が暗渠となり、地上から姿を消してしまっています。しかし暗渠の一部は、現在、遊歩道や緑道、道路の片側だけが広い歩道となって整備されたりしていて、たどって行くことができます。
この本でたどられる暗渠は、都内を流れる渋谷川支流、神田川支流、目黒川支流、石神井川支流などですが、杉並に関わる場所としては、神田川支流の桃園川、井草川、和泉川、善福寺川支流の松庵川、そして玉川上水などが取り上げられています。
中でも、住宅街を流れていた松庵川は、数十年間しか存在しなかった「幻の川」と呼ばれていて、地図上ではそのルートがほとんどわからない川の痕跡を、実際に歩いてたどる記述は、挿入されている現地の写真とともに、とても興味深く読むことができます。
また、玉川上水は、取水地の羽村からずっと地上を流れてきて、杉並区内に入ってはじめて暗渠化されています。甲州街道と併走して、3か所の公園と1か所の緑地として整備されていて、こちらの方は誰もが気軽に散策することができます。
ぜひとも、この本を片手に、実際に歩いて、杉並区内の暗渠散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。(西荻図書館作成)
8月
東京懐かしの昭和30年代散歩地図
ブルーガイド編集部/編 実業之日本社
冒頭「一見、変化が乏しい街に思える。」と紹介されてはいますが、昭和30年代まで、青梅街道を都電が走り、「環七」の通りも未完成と、実は現在の街並みとは異なる様子がうかがえます。今や名物となった阿佐ヶ谷の「七夕祭り」や、「高円寺阿波踊り」が始まったのもこの頃です。
またページの端には、その時代ごとの風俗、情報がちりばめられ、当時の世の中に思いを馳せずにはいられません。杉並のページには昭和30年代の物価の一覧が掲げられ、「牛乳15円」など微笑ましいかぎりです。(成田図書館作成)
7月
少女は本を読んで大人になる
阿川 佐和子 ほか/著 クラブヒルサイド/編 スティルウォーター/編 現代企画室
杉並区に長年住んでおられる角田光代さんは伝説的作家尾崎翠の代表作「第七官界彷徨」に自分ひとりの楽しみを見つけるような読書の醍醐味を見い出し、久我山出身の著述家湯山玲子さんは林芙美子著「放浪記」に生きるエネルギーの強さを学んだという。翻訳家鴻巣友季子による「嵐が丘」の回では〈かつての少女たち〉のみならず〈かつての少年たち〉も集ったとか。
新しい経験への扉を開くかつて読んだ本、読みそこなってしまった本、いつかは読みたい本・・・本棚にもう一冊加える本を探すヒントが見つかるかもしれません。(宮前図書館作成)
6月
高円寺かふぇ純情の事情(富士見L文庫)
石原ひな子/著 KADOKAWA
この亮二、翔太の二人と、「かふぇ純情」を訪れる客たちをめぐる物語が、高円寺の商店街を舞台に展開します。架空の物語ながら、高円寺に実在するお店もちょっと出てきたりするので、高円寺を知る人にはより楽しめるのではないかと思います。この物語を読んだら、ぜひ、高円寺の商店街めぐりをしてみてください。(高円寺図書館作成)
5月
中央線がなかったら 見えてくる東京の古層
陣内 秀信、三浦 展/編著 NTT出版
4月
大東京23区散歩
泉麻人/著 村松昭/絵 講談社
3月
ファイヤーボール 生活安全課0係
富樫 倫太郎/著 祥伝社
小説の舞台は杉並。西荻窪・荻窪・阿佐ヶ谷・高円寺・永福町・成田など広範囲にわたり、多くの実在の場所も登場する。杉並中央警察署は架空だが、「青梅街道沿いで消防署の近く」だったり、サンドイッチ工場に勤務する従業員の名前が「崎山」だったり。ある日、管内で発生したぼや騒ぎ。小早川は、現場に遺された残骸から連続放火事件を疑う。犯罪心理学を駆使し、過去のデータをもとにプロファイリングしていく過程のおもしろさに加えて、杉並区内の実在の場所を思い浮かべながらも愉しめる。(今川図書館作成)
2月
人が集まる「つなぎ場」のつくり方 都市型茶室「6次元」の発想とは
ナカムラクニオ/著 阪急コミュニケーションズ
1月
バスを待って
石田千/著 小学館
[ここまでが本文です。]