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本の中のすぎなみ 2019年

12月

MPのジープから見た占領下の東京

MPのジープから見た占領下の東京

原田 弘/著  草思社

この本は、「MPライダー」という特殊な仕事を経験した、一警察官の目から見た戦後の焼け跡、混乱の時代の様子をまとめた記録となっています。著者は、長年にわたって杉並区に住み、杉並郷土史会会長も努めた原田弘さんです。
 原田さんは、終戦末期に杉並消防署に消防手(今の消防士)として勤めていましたが、終戦後は、警察官に転官することになり、連日MPジープに同乗し、憲兵(MP)とともに東京都内を巡回して、治安維持にあたっていました。
この時、著者は「戦争の傷痕がいたるところに残されていることをあらためて見せつけられた。」と語っていますが、そんな中でも、著者は慣れ親しんだ杉並を通過する青梅街道、占領軍がKアベニューと呼んでいたルートをパトロールするのが好きだったといいます。この頃の沿道の景色は、新宿から高円寺の都電車庫あたりまでずっと焼野原がつづき、馬橋から阿佐ヶ谷以西になると、戦災の被害は少なく、戦前の姿を残していたようです。また、荻窪駅周辺ではバラックのマーケットが建てられ人の波が溢れていたことや、荻窪署交番裏の都バスのターミナル休憩所でジープを降りて暖をとったことなどの想い出が語られています。
日本の多くの人たちにとって、終戦後の占領時代のことが忘れさられようとしている今、戦後がどのような時代であったのか、また当時の日本人がどのような気持ちで生きていたのかを知る上でも貴重な著書といえるのではないでしょうか。(西荻図書館作成)

11月

奇跡のラーメン店は、どのように誕生したか。

奇跡のラーメン店は、どのように誕生したか。

草村 賢治/著  旭屋出版

永福町駅北口を出て、井の頭通りを挟んだ目の前の行列。地元住民にとってお馴染みの光景が永福町大勝軒である。店内に入りいざラーメンが運ばれてくると、その器の大きさに驚く。1食分の食事として十分に満足できるよう、他店の約2倍の麺の量を使用しているという。また、昭和30年の開業当時に一般的だった豚骨スープではなく、煮干しのスープもお店の自慢である。
本書では、初代店主・草村さんのそういったラーメンづくりに対するこだわりはもちろん、器やサービスへの気遣い、従業員教育に対する考え方など、「日本一美味しいといわれるラーメン屋になる」志にたくさんふれることができる。昨年8月に草村さんは亡くなったそうだが、待ち時間用の雑誌、お冷やの水の継ぎ足し、BGM、行列で待つ客への傘の貸出…本書で書かれているようなサービスは変わらず行われている。改めて草村さんの思いを知って、生卵トッピングの中華麺を食べてみては。(成田図書館作成)

10月

新しいおとな

新しいおとな

石井 桃子/著  河出書房新社

 翻訳家、編集者、作家としてたくさんの児童文学を日本に広めた石井桃子さん。子どもと本を結ぶ「児童図書館」の役割に深い関心を向け、荻窪の自宅の一室を開放して「かつら文庫」を開いたのは、1958年のことだそうです。
 本書は、文庫を訪れる子どもたちの様子をもとに、1960年代の終わり頃までに書かれた、子どもと読書についてのエッセイ集です。
 「子どもにとってよい本とは何か」という問いを追い続け、実際に読書する子どもたちを細かく観察する日々が、ていねいに綴られていました。「私は、ここにくる子どもを見ることから、どのくらい学んだかわからない。」と石井さんは言います。子どもが、自分の楽しみを自分で選びとる力を発揮するために、よい本をそっと子どものそばに置くことに全力を注ぎたいという思いが伝わってきました。
子どもの本について考えるとき、何度でも読み返したくなる一冊です。
 「かつら文庫」は、今も荻窪の同じ場所で、子どもたちを迎えています。
(宮前図書館作成)

9月

東京いい道、しぶい道 カラー版

東京いい道、しぶい道 カラー版

泉 麻人/著  中央公論新社

 本書は散歩の達人である著者が、東京の様々な街へ行き、そこにある道を歩いてエッセーとしてまとめたものですが、簡単な東京ガイドとしても使えるように構成されています。写真も豊富に使われており、読むと著者と共にその場にいるような気になります(さりげなく語られるその街や道についてのエピソードも面白いです)。
 さて、街歩きの楽しみとは何でしょうか。それは新たな何かとの出会いだと思います。誰もが初めての道を歩いて意外なものを発見し、その街の歴史なども感じつつ何とも言えない嬉しさを感じたことがあると思います。
 杉並区については、荻窪からの道で大田黒公園、荻外荘、与謝野公園などが紹介されています。 本書を読み東京の「いい道、しぶい道」に出会い、新たな東京の魅力を発見して下さい。(高円寺図書館作成)

8月

金田一家、日本語百年のひみつ

金田一家、日本語百年のひみつ

金田一 秀穂/著  朝日新聞出版

 「金田一家」と聞いて頭に浮かぶのは誰でしょうか。この本のタイトルにもなっている「金田一家」とは、あの有名な名探偵ではなく、金田一京助・金田一春彦・金田一秀穂の三代の国語研究者の一家です。
 金田一家三代の編纂する辞書は、誰もが一度はお目にかかったことがあるのではないでしょうか。本書は、国語研究の老舗・金田一家の三代目秀穂氏が、金田一家の歴史と合わせて日本語について語る解説書です。
 さて、金田一家と杉並区との関わりは、1924年文京区から杉並区(当時は東京府豊多摩郡杉並町)に転居したことにはじまります。春彦氏も秀穂氏も杉並の小学校に通っていました。本書には、二代目春彦氏の死後、秀穂氏が築70年の実家に戻ってくることになった旨記載があり、自宅の書斎や近所の様子が、父春彦氏の思い出とともに懐かしく描かれています。また、本書には出てきませんが、京助氏・春彦氏は杉並区立小中学校の校歌の作詞をいくつか手掛けていることも興味深いエピソードです。個人的な話で恐縮ですが、難しい四文字熟語っぽい歌詞の校歌が多い中、春彦氏作詞の松庵小学校の校歌の一節「さあ みんな 学校へ行こう」という歌詞がとても気に入っています。(柿木図書館作成)

7月

かがやき荘アラサー探偵局

かがやき荘アラサー探偵局

東川 篤哉/著  新潮社

西荻窪にある架空のシェアハウス『かがやき荘』に住むアラサー女子3人組がひょんなことから探偵になるという突飛な設定のミステリ小説です。
自称19歳のコスプレ女子の関礼菜、特徴的な方言が印象的な占部美緒、ミステリ・マニアの推理オタクでリーダー格の小野寺葵が主人公。3人はとある事情から会社を追われ、悠々自適に好きなフィギュア集めに熱中していました。ところが、家賃を滞納すること3ヶ月、ついにかがやき荘のオーナー法界院法子夫人は秘書に家賃の督促へ行くように命じます。支払い能力のない3人は、法界院家で先日起きた殺人事件を解決するかわりに滞納家賃を免除にしてもらう契約を秘書と交わします。探偵未経験の3人がどのように事件を解決するのか、ぜひお手にとってお確かめください。
所々で杉並の地名が登場する他、登場人物たちが西荻窪の魅力について熱く語るシーンがあります。また、『かがやき荘』の場所について、著者は「西荻窪あたりがそれっぽい」と思い設定したそうです。物語のおもしろさはもちろんのこと、随所で杉並らしさを味わえる作品です。(永福図書館作成)

6月

ぼくの昔の東京生活

ぼくの昔の東京生活

赤瀬川原平/著  筑摩書房

長い間、阿佐ヶ谷付近に住んでいた著者の、昔をなつかしむエッセイ。
1950年代後半の生活が目の前に現れてきます。
セロテープ、コカコーラ、ジーパンすべて初体験。日本の高度経済成長の目撃譚です。
当時、東京女子大の近くにあった武蔵野美術学校に通っていた著者の貧しい学生生活、バイト三昧の日々。芸術家をめざす若者たちの貧しくも夢のあふれる生活とともに、古きよき時代の杉並の様子が垣間見られます。
荻窪の教会通りがちょっと登場しますが、どこに書かれているか捜してみてはいかがでしょうか。
昔を知っている方も全然知らない方も、ノスタルジーに浸って楽しめる一冊です。(今川図書館作成)

5月

風の息 文春文庫 上・中・下

風の息 文春文庫 上・中・下

松本 清張/著  文藝春秋

1952年(昭和27年)4月9日、日本航空「もく星」号は悪天候のなか、福岡へ定期飛行の途中で消息を絶ちます。憶測・誤報が飛び交うなか、翌日になって大島の三原山に墜落しているのが発見されました。当時にしては大規模な航空事故であったにも関わらず、在日米軍と日本の政治関係などにより、事故原因は曖昧なままとなります。
物語はこの事故の説明から始まり、そして舞台は店主の中浜宗介が営む阿佐ヶ谷の古書店「蒼古窟」へと移ります。ある日、持ち込まれた航空関係の資料を店主がチェックしていくうちに、その資料の元の持ち主は「もく星」号事故について調べていたらしいこと、この事故に不可解な点が多いこと、そして持ち主は既に亡くなっていることがわかってきます。
謎が多いこの事故の真相を、店主がコツコツと追う展開がどこか懐かしくもあり、現代の感覚で読むと新鮮に感じます。所々で阿佐ヶ谷などの街の様子も出てきます。(方南図書館作成)

4月

平成大家族

平成大家族

中島 京子/著  集英社文庫

元歯科医の緋田龍太郎と妻春子、認知症気味の姑、そして長期引きこもりの長男。一家4人は杉並の家で暮らしています。そこに突如、自己破産した長女夫婦とその息子が転がり込み、さらに、離婚して若い芸人との子を宿した次女が出戻って、一家は一気に4世代8(9)人の大家族に膨れ上がります。
各章ごとに、家族の一人が主人公となり、それぞれの心情が描かれていきます。彼らの抱える悩みは、平成を生きてきた私達にとって他人事とは思えないものばかりですが、作者の絶妙な語り口によって、重くならず、可笑しみすら醸し出されています。
逡巡の末、やがて息子や娘達は、それぞれ新たな活路を見出していくことになります。
ところで、家族の住む杉並の家は、「中井草」という架空の地にあります。長女の息子が通う中学校も実在しません。しかし、周辺の様子は細かく描き込まれています。最寄りの駅は西武線沿線。荻窪駅から帰宅する場合は、「中井草」駅行きの関東バスに乗り、「妙冠寺池」という停留所で降ります。架空の地ではありますが、杉並北部の閑静な住宅街をイメージすることができます。(高井戸図書館作成)

3月

誰かと暮らすということ

誰かと暮らすということ

伊藤 たかみ/著  角川書店

 下井草は、杉並区の北に位置する住宅地の広がる静かで落ち着いたまちです。
 こののんびりしたまちを舞台にした小説に『誰かと暮らすということ』があります。うまく気持ちを伝えられない不器用な男女の恋愛模様を軸に、下井草というまちに住む人々を主人公とする短編集です。著者は『八月の路上に捨てる』で芥川賞を受賞した伊藤たかみさん。大事件が起きたりはしないが、登場人物たちの日常のささやかな幸せに、読後感はほんわかと心温かくなります。
 ちなみに物語のなかではまち並みの描写はあまりありません。作品によっては下井草の「下」の字すら出てきません。だけど読み進むうちに不思議と私の知っている下井草の情景が浮かんできます。では、まちの描写がまったくないのかというと、そうでもありません。表題作である「誰かと暮らすということ」には登場人物が感じた下井草の雰囲気について描かれていて、それは誰かと暮らす秘訣と同じだと語られています。下井草に住んでいる方ならニヤリとすることでしょう!(下井草図書館作成)

2月

杉並たてもの応援団が選ぶ まちかどの名建築

杉並たてもの応援団が選ぶ まちかどの名建築

杉並たてもの応援団/編集  杉並たてもの応援団

町を歩いていると、ぱっと目を引く独特な建物やレトロな外観の住宅を見かけることはありませんか? この本では、東京女子大学や浴風会本館、中央図書館の近くにある西郊ロッヂング・旅館西郊本館など、杉並区内の歴史ある「名建築」を、カラー写真とともに紹介しています。
通常は一般公開していない建物の写真や、今は取り壊されてしまった「まぼろしの名建築」の写真など、貴重な写真も多く掲載されています。また、瓦や壁、窓やタイルなどの建物のディテールの見方や、杉並区内の建物の特徴など、知っておくとまち歩きをさらに楽しめる豆知識が紹介されているのも嬉しいポイントです。
本書を作成した「杉並たてもの応援団」は、1999年の発足以来、杉並区内の歴史的建造物の調査・保存などの活動をしている団体です。応援団が選んだ「人々の息吹(生活感)のある建物」「手造り感のある建物」を、是非本書を通して確かめてみてください。(中央図書館作成)

1月

我、弁明せず。

我、弁明せず。

江上 剛/著  PHP研究所

 明治、大正、昭和と激動の時代を、三井銀行のトップ、日本銀行総裁、大蔵・商工大臣まで務めた池田成彬という人物がいました。
 周りからの圧力にも負けず、常に自分の信念を貫く姿は「サムライ」とも呼ばれていました。
 昭和12年(1937年)第1次近衛文麿内閣が発足し、昭和13年(1938年)近衛内閣改造時に大蔵兼商工大臣として内閣参議に加わり、近衛文麿と対峙する場面が出てきます。その場所が荻窪にある荻外荘でした。当時荻外荘は近衛文麿の邸宅でした。
 また、昭和15年(1940年)には、状況の厳しくなってきた日中戦争の今後の方針を協議する話し合いがそこで行われたことも書かれています。この協議には陸相であった東条英機も訪れ参加していました。
 数々の政治の話し合いが行われ時代を動かした人物も訪れていた荻外荘。ここ荻窪でどのように日本の未来が決まっていったのか、敷地の一部は公園にもなっているので、読み終えた後に、足を運んでみるのも良いかもしれません。(南荻窪図書館作成)

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