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本の中のすぎなみ 2022年

12月

スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官

スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官

川瀬 七緒  講談社

 
 法医昆虫学をご存知でしょうか。
 死体についた虫の成長具合や種類から、死亡時刻を推定したり、死亡の場所を特定したりする学問です。
 日本では、認知度はとても低いですが、アメリカなどでは、裁判で証拠として採用されることもあります。
 杉並区・下井草の住宅で殺され、腐乱死体となって発見された独居老人。
 法医昆虫学者。赤堀涼子と警視庁の岩楯祐也刑事の凸凹コンビが事件の真相に迫る『法医昆虫学捜査官』シリーズの7作目。
 今回は、赤堀には、精神分析支援センターの同僚である波多野博士(プラス不登校の少年・夏樹)、岩楯刑事には、優秀ではあるが、世の中を冷めた目で見ている高井戸警察署の深水巡査部長がそれぞれ相棒となり、片や虫やツバメを追い、片や地道な警察捜査を進め、その二つが交わる終盤、ついに犯人が判明する。
 虫嫌いの方にはきつい表現もありますが、読み終えたときには、このシリーズの他の作品も読みたいと思えるようになっているかもしれません。(中央図書館作成)

11月

ゴミ清掃員の日常

ゴミ清掃員の日常

滝沢 秀一/原作・構成 滝沢 友紀/まんが  講談社

 杉並区にはゴミのエキスパートと呼ぶべき有名人が住んでいるのをご存知ですか? その人の名は滝沢秀一さん。お笑い芸人にしてゴミ清掃員で、環境省から「サステナビリティ広報大使」の第一号に任命されている人です。この本は滝沢さんの妻である友紀さんが漫画を手掛け、滝沢さんが清掃員の仕事を通して感じた悲喜こもごもをコミカルに描いています。この本を読んで一番驚いたのは、可燃ゴミ焼却炉の再稼働には毎回200万円以上のコストが掛かるということ。ゴミの分別がしっかりなされていないと焼却炉を停止して掃除する回数が増えて、その度に膨大なお金が投入されることになるのです! 他にも、リサイクル工場に運ばれたペットボトルのキャップやラベル剝しは人力で行っていること、治安のよい地域のゴミ収集場所は綺麗であること等々、知れば驚く内容ばかり。ゴミ問題に対して意識が高まること間違いなしです。
皆さんはゴミの分別はきちんとできてますか?(今川図書館作成)

10月

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

阿佐ヶ谷姉妹  幻冬舎

ピンクのお揃いの衣装が印象的な大人気お笑いコンビ『阿佐ヶ谷姉妹』。姉の渡辺恵理子さんと妹の木村美穂さんは、どこか似た雰囲気をお持ちですが、血の繋がりは一切ありません。そんな四十路で独身の二人が、お互い不満を抱きながらも、歩み寄って暮らす様子を交互に書き連ね合う、ドタバタエッセイです。杉並区阿佐ヶ谷のアパートを舞台に繰り広げられる物語は、駅前の西友、行きつけの中華料理屋さん、コンビ名『阿佐ヶ谷姉妹』の名付け親である鰻のお店も登場します。見慣れた阿佐ヶ谷の風景が本に書かれていると、テレビでどこか遠い存在に感じていたお二人を身近に感じる事が出来て、ほっこりとした気持ちになります。お二人の書く文章は自然体で、共同生活におけるお互いの譲れないこだわりなど、赤裸々なエピソードがとても面白く、読んでいて終始笑みがこぼれてしまいました。(方南図書館作成)

9月

中学校でブルースかよ!?

中学校でブルースかよ!?

深田 悦之/著  毎日新聞社

2003年杉並区立和田中学校3年生の臨時音楽教師としてブルースを教えることになったロックバンドのヴォーカリストの奮闘記。
東京都で初の民間人企業から校長を起用したことで、当時マスコミにも取り上げられ注目された藤原和博さんからのオファーだった。面識がある程度だったが「ゲストティーチャー」の依頼を「ギャラは給食」で受けてしまったことが始まり。「ギターを弾いてみたい」という生徒の声を受け、選択音楽の授業を作ってはみたものの、ギターを教えられる教師がいないことが判明。そのうえ、著者はギターリストではなくヴォーカリスト。戸惑いながらもふと頭に浮かんだ「ブルースセッション」を提案。2つのコードで弾けるブルースなら授業中でギターを弾けたという実感が持てるのではないか。そんなことから始まった週1回の選択音楽授業は1年続き…。
学校では、既成概念にとらわれず、周りの声に耳を傾け、計画性よりも実現性を優先し、柔軟な軌道修正をしながら作り上げることは、かなり斬新で画期的なことだが、教育現場に風穴を開ける一つになったのは間違いない。教育とかけ離れた世界にいた筆者と多感な年代の中学生との関係性も興味深い。(高井戸図書館作成)

8月

東京しるしのある風景

東京しるしのある風景

松田 青子  河出書房新社

郵便局には「風景印」というものがある。風景印とは、切手や葉書に押される消印の一種で、絵柄に地域のゆかりある風景等がデザインされたスタンプである。配備されている郵便局ごとに絵柄が異なり、コレクションして楽しむ愛好家も多い。
本書は、作家・松田青子さんが23区内の風景印を集めていくエッセイで、2年間にわたる収集記録。風景印の紹介だけでなく、局員が風景印を押す時の対応や周辺の街の景色が、ほのぼのとした文章で綴られている。風景印を押す局員は上手い人もいれば、そうでない人もいて、その様子の描写が特に面白い。
杉並区の回では、荻窪駅と西荻窪駅の間にある2つの郵便局を訪ねる。杉並の名所が描かれた風景印だが、荻窪郵便局の風景印は摩耗しているためか、絵柄がつぶれてしまったようだ。局員が風景印を押すときのドキドキ感が、コミカルな文章と印影写真を通じて感じ取れる。また、駅から郵便局へ向かう道中や、郵便局から駅に戻る時の寄り道、杉並の街並みが著者の視点で紹介されている。
風景印を通じて東京の魅力に触れる1冊。(下井草図書館作成)

7月

『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ケ谷京介』

『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ケ谷京介』

川瀬 七緒  講談社

ノスタルジックな雰囲気漂う高円寺、阿佐ヶ谷を舞台にしたミステリー小説です。十数年前に阿佐ヶ谷のアパートの一室で起きた事件は、警察による捜査もむなしく、迷宮入りしていました。主人公の桐ケ谷京介は、偶然テレビでその事件を知り、興味を持ちます。京介は独自の視点で、被害者の着ていたワンピースの特徴から状況を推理していきます。タイトルのヴィンテージガールとは……?気になった方は、ぜひ読んでみてくださいね。(南荻窪図書館)

6月

桜桃・雪の夜の話

桜桃・雪の夜の話

太宰治/著 七北数人/編  実業之日本社

太宰治が4年ほど杉並で暮らしていたことをご存じだろうか。三鷹に移った後も、井伏鱒二を慕い「阿佐ヶ谷会」にはたびたび参加していた。 酒にまつわる対談・エッセイ・小説集である本書の中から、自伝的短編小説『東京八景(苦難の或人に贈る)』を紹介したい。この作品は、男が大学進学のために21歳で上京してからの約10年間を回想し、「東京の風景」ではなく「風景の中の私」を描いたものだ。 戸塚、五反田、神田、八丁堀、芝と転居を繰り返し、25歳のときにHという女性と天沼三丁目に越してくる。しかし、そこでの生活はまさに「どん底」だった。周囲に散々嘘をついて留年を重ね、切羽詰まって自殺未遂。盲腸炎が悪化し、入院先で薬物中毒に。酒に溺れる日々のなか、Hの不貞が発覚し今度は二人で自殺未遂。親族の不幸も重なり、多くを失ったとき、ついに文筆生活を志すのだ。 男は最後に、「人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか」という。天沼での日々が太宰にとっての立脚点のひとつだったのだとしたら。その後に生み出された数々の名作も、少し身近に感じられるのではないだろうか。(阿佐谷図書館作成)

5月

発掘写真で訪ねる中野区・杉並区古地図散歩 明治・大正・昭和の街角

発掘写真で訪ねる中野区・杉並区古地図散歩 明治・大正・昭和の街角

中村健治  株式会社フォト・パブリッシング(発行)株式会社メディアパル(発売)

中野区・杉並区は、鉄道沿線を中心に、住みやすい町として老若男女問わず親しまれている、都内でも人気の地域です。本書には、駅前や各路線の古地図が多数掲載されており、当時の、街並みや人々の様子を垣間見ることができます。メインとなる地図解説では、年代ごとに見開きになっていて、明治・大正・昭和と年代順に町の変遷がわかります。中野区と杉並区を12の区域に分けているので、気になる地域だけでも気軽に眺められます。
様変わりした街もあれば、何十年と変わらない街もあります。普段何気なく歩いている通りも、昔の姿を知ることで、いつもと違って見えたり、より愛着を感じたりするかもしれません。
中野区と杉並区の前身である、中野村と杉並村の発足130周年記念に出版されたこの本。近年は中野駅周辺の再開発等もすすめられ、町の姿はこれからも、時代とともに変わっていきそうです。
中野区・杉並区に馴染みの深い方は勿論のこと、これからこの2つの区を知る方にも、是非ご覧になっていただきたい一冊です。(西荻図書館作成)

4月

見つける東京

見つける東京

岡部敬史・文 山出高士・写真  東京書籍

 荻窪、そして南阿佐ヶ谷にある商店街「すずらん通り」。実は同じ名前の通りが都内に15ヶ所以上あるといわれています。多数存在する理由として、大正期にすずらん型の街路灯を設置したところ商店街が繁盛し、これが広まったという説があります。
 また、杉並区を南北に縦断する環状七号線・八号線には一号線から六号線もあることはご存じでしょうか。都内のどの通りがそれにあたるのか、答えは本書でお確かめください。「伊藤忠太」に始まり「レンガ造りの駅舎」まで33の項目を五十音順に並べ、合間に11のコラムを挟みながら東京の多様性、歴史の多層性の面白さを多彩な写真と文章で紹介しています。
 
 新型コロナウィルスによる様々な制限の中でこの本は作られました。進化したにも関わらず十全にその魅力を発揮できていない東京の観光業を誰が楽しむのか、「その一歩を踏み出すのは、東京の我々であり、日本の私たちだと思うのです。」(『おわりに』より)と著者は述べています。
「目でみることば」のライターとカメラマンによる、東京再発見の書です(中央図書館作成)。

3月

銭湯図解

銭湯図解

塩谷歩波/著  中央公論新社

著者の塩谷歩波氏は杉並区高円寺にある「小杉湯」の番頭兼イラストレーターである。
小杉湯は創業1933年で、令和2年1月に国登録有形文化財に登録された老舗銭湯だ。他にも杉並区成田東にある「ゆ屋 和ごころ 吉の湯」の紹介もされている。
本書の特徴である湯解図はアイソメトリックという建物内部に角度を付け、俯瞰的に描く建築図法を用いて描かれている。実際に建物を測量して浴槽の広さ、高さ、洗い場の角度に至るまで、正確に縮尺され図面化がされていることには驚きだ。さらに図には所狭しと解説が書かれていて、読みごたえも抜群。銭湯未経験者のために銭湯の入り方や交互湯、サウナについて等コラムも掲載されている。
大きな湯船、富士山の絵、知らない人との交流など、行ったことのない人には新鮮で、久しぶりに行く人には懐かしく、古き良き憩いの場は魅力がいっぱいだ。一人で、家族と、友達と、そんな昔ながらの銭湯に、足を運んでみたくなる1冊である(成田図書館作成)。

2月

雑貨の終わり

雑貨の終わり

三品 輝起  新潮社

“開店してから十数年、身のまわりのあらゆる物がつぎつぎと雑貨に鞍がえし私の店へとなだれこんできた。専門店にあったはずの工芸品も本も服も古道具も植物もみな、雑貨になった。勢いは年を追うごとに増していき、いよいよじぶんがなにを売っているかよくわからなくなっていく。”
西荻窪で雑貨店を営む店主の2冊目のエッセイ集。
いままで雑貨ではなかった物が雑貨として流通して消費されることを「雑貨化」と呼び、その視点から「村上春樹」、「無印良品」、「ミッキーマウス」、「ポートランド」など、見事なモチーフのセレクトで話が展開され、雑貨が繁茂するわが国の“おしゃれ”な消費社会のありようを切れ味鋭い文章でつづっていきます。
半径10メートルの店内から観察したまなざしは鋭く、「雑貨についてのエッセイ」かと思いきや、小説=フィクションのような一編もあり、ひとことで「何々についての本」と説明することのできない奥深さが、この一冊にはあります(宮前図書館作成)。

1月

東京23区境界の謎

東京23区境界の謎

浅井 建爾  自由国民社

東京都には23の区がありますが、どうしてそのようになったかは意外に知られていないのではないでしょうか(35区の時代もあった)。
 本書は江戸幕府が開かれてから、紆余曲折を経て現在の東京になるまでの長い道のりを地図も用いて丁寧に説明していきます。
 さて区の境界には、その土地の様々な歴史が秘められています。例えば駅名です。多くは地名から付けられていますが駅名と駅の所在地が異なっている場合があります。代表的なのがJR品川駅(港区にある)と目黒駅(品川区にある)です。また京王線の八幡山駅は杉並区にありますが、八幡山という地名は世田谷区です(そうなった理由は、本書をお読みください)。
 他にも23区の面白いエピソードがたくさん紹介されていますが、読み進むにつれ自然に東京の地理と歴史についても詳しくなっていきます。本書を読み東京23区境界の謎を解いてください。(高円寺図書館作成)

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