3月の本の中のすぎなみ

二人の嘘
東京地方裁判所の判事・片陵礼子は「十年に一人の逸材」と呼ばれ、将来を嘱望されていた。
最高裁判事になることが確実視され、微塵の汚点もないキャリアを邁進する中、礼子はかつて自らが懲役刑に処した元服役囚が、近頃裁判所の前に佇んでいることを知る。判決への不服か、それとも自分が間違いを犯したのか。気になって過去の公判資料を見返した礼子は、ある違和感を覚えて男のことを調べ始める。
美貌の判事と謎多き殺人犯。二度と交わるはずがなかった男女の人生がふたたび交錯した時、悲劇の幕が開く。
礼子は司法修習生時代に知り合った夫の両親が建ててくれた、角川庭園近くの一軒家に住んでいます。丸の内線で荻窪から霞が関まで通勤しており、元服役囚の蛭間と最初に言葉を交わしたのは荻窪駅です。荻窪駅前のバスロータリー付近などの描写もあります。
二人の「噓」とは何なのか、せつなさが胸を打つミステリーです。 (高井戸書館作成)
2月の本の中のすぎなみ

ばあさんは15歳
中学3年生の菜緒と、祖母である「ばあさん」が繰り広げるタイムスリップ・アドベンチャー。
渋谷の家が改築中のため、杉並区下井草のマンションで菜緒と同居しているばあさん。ふたりは春休みに出かけた東京タワーの展望台エレベーターで、突然謎の振動に襲われる。ようやく開いた扉の先は、ばあさんが15歳だった1963年の東京につながっていた!
ふたりは、この時代には存在していないであろう下井草のマンションではなく、渋谷にあるばあさんの家を目指す。東京オリンピック開催直前の東京で、ばあさんの思い出に残る人々と出会う。そして、ばあさんの忘れられない過去と後悔が、少しずつ明らかになっていく…。
現代っ子の孫と口の悪いばあさんの、愉快で爽快な旅。心ふるえるラストまで一気に読める物語です。
物語の年である1963年は、住居表示が実施され、現在の「下井草○丁目」という呼び方が始まった年です。それまでは下井草町、向井町、中瀬町、神戸町、住吉町などの地名でした。
(下井草図書館作成)
1月の本の中のすぎなみ

中央線怪談
杉並区に噂される怖い話や都市伝説があるのをご存じでしょうか。
今回紹介する『中央線怪談』は、著者が中央線沿線(東京駅から高尾駅間)の街に住む情報提供者に聞き取り調査を行い、それを元に33話にまとめた実話怪談集です。
杉並区が舞台となるのは、怪奇現象が多発するアパート物件の調査記録『杉並のタイラ荘』や、中杉通りのファミレスでターゲットを物色する『つきまとう赤い女・阿佐ヶ谷』など、合計6話。杉並区にお住まいの方なら「これはあの場所のことかな」などと推測しながら読んで楽しめると思います。時折挟まれるコラムでは、いかにして平将門の首塚が有名な祟りスポットになったのかなどを著者が考察しており、こちらも読みごたえがあり面白いです。
『中央線怪談』は各駅ごとにバラエティに富んだ怪談を収録しているにもかかわらず、全33話を通して読んでみると「中央線らしい」空気感があり、怪談も中央線で繋がっているのではないかと感じられると思います。
(南荻窪図書館作成)