5月のおすすめ図書

山怪 朱 山人が語る不思議な話
皆さんは「山」に対してどの様なイメージをお持ちですか?
豊かな森林、きれいな空気、ハイキングや登山など思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
ただそれは山が我々に見せる顔の本の一部にすぎません。
本書には、カメラマンとして活躍する著者が全国各地に足を運び、
古くから山に住まう「山人(やまびと)」達から聞いた不思議な話が記録されています。
熊や狸、ツチノコなど多くの生き物が登場し、その中でも登場回数が多いのが狐です。
各地で狐に化かされた話やいたずらされる話が多く、人間と狐の関係に興味をそそられます。
また、恐怖を抱かせる話も。人がいるはずのない場所に見える人影、どこからともなく聞こえてくる謎の声や音。さらには、見覚えのない人が写真に写っている…。
「本来いるはずのないモノが現れるのは山では珍しくない現象だ」と著者は言います。
『山怪』シリーズの第4弾となる本書は、コロナ禍を乗り越え取材に協力してくれた山人たちの貴重な証言あっての出版となった“珠玉”の一冊です。(阿佐谷図書館作成)
4月のおすすめ図書

あなたの脳のしつけ方
「蜘蛛の糸」のカンダタは悪の限りを尽くし地獄に落ちたが、唯一「蜘蛛を殺さなかった」事から物語が始まる。ヒトラーも最期を共にした愛するエヴァがいた。「天は人の下に人を作らず」の福沢諭吉も娘の結婚で「身分違い」を理由に猛反対。人の「心」の状態は地獄・残酷・愛・差別などが重なり合い、喜怒哀楽と割り切れないものである。
「心」は一日でも千変万化。朝食の香りに食欲が湧く。前日ハードな仕事で疲弊した事を忘れた様に。苦しかった心は寝ている間、どこへ行っていたのだろう。社会で出会う人・事に心は反応する。瞑想しても腹は減る。京都で有名な三千院の三千とは心の外の事象(縁起)に応じ一瞬で心が変化。それにより現実世界も変転するという意味らしい。「化石燃料から自然エネルギーへ」と人の考え(心)が変われば環境も変わる例といえる。この不確実な心を脳科学者中野信子は分かりやすく説明してくれる。不確かな心を理解しながらも振り回されず「しなやかに」かつ「合理的」に付き合わねばならないのが自分の心だ。心の命ずるままでは我儘だ。 (西荻図書館作成)
3月のおすすめ図書

業平 小説伊勢物語
在原業平は平安時代初期の実在の人物です。容姿端麗で歌に優れ恋に生きた、かの光源氏のモデルの一人とも言われています。そんな業平を、「伊勢物語」の主人公として仕上げた小説です。
皇族に生まれながら臣下にくだり、政治的に不遇でしたが、その胸の隙間を埋めるように数多くの恋をし、情感溢れる和歌に心情を託す姿が、15歳の初冠から辞世の句まで語られています。
"今日の花を愛で遊ぶ人は多けれど、それを千年の果てまで留め置くことができるのは、私より他には居らず。″実際に千年以上の時を超えても残る和歌。それを可能にしたのは、言葉とその響きを大切にする日本人の感性と美意識。彼の和歌への矜持を感じます。
大野敏明氏のカラー挿絵と共に、雅な平安時代を是非ご堪能ください。(成田図書館作成)
2月のおすすめ図書

フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光と視覚」の革命
1674年、オランダの小さな町デルフト。
素人科学者のアントニ・フン・レーウェンフックは自作の顕微鏡を使い人類で初めて微生物を発見。そのとき広場を挟んだ向かいに住む画家、フェルメールは新しい光学機器カメラ・オブスクラを覗きこみ光の効果をキャンパスに再現しようとしていた―――
今でこそ微生物や光の存在について知らない人は居ませんが、17世紀当時に目に見えない物の存在を訴え、信じてもらうというのが簡単な事ではない中で、肉眼では決して見ることができない自然界の真実を明らかにした2人について記述された本です。
もしかしたら、小さな町に住む科学者と光の魔術師は知り合いだったのかもしれない。
もしかしたら、目に見えない物を扱う者同士意気投合して、友となっていたかもしれない。
当時の資料から2人生涯を紐解きつつ、レンズの製造方法や視覚理論の歴史、フェルメールが用いた遠近法や光学について解説された著者のユニークな説に、“もしかしたら”というワクワクされる気持ちで引き込まれる一冊です。(宮前図書館作成)
1月のおすすめ図書

日本料理史
世界中で和食とも呼ばれる日本料理がブームです。その要因として健康や美容に良く、また見た目も美しい事などが挙げられています。こうした日本料理がどのような歴史を経て形作られていったのか、本書は旧石器時代から現代に至るまでを豊富な資料を駆使して詳細に解説していきます(特に和食の代表であるスシ、テンプラ、スキヤキについては別にコラムで扱っています)。
さて、日本料理の米や野菜や魚を中心とする基本的な形は室町時代から成立したようですが、日本という国の地域性や文化、そして他国からの影響を受け発達していった事が本書を読むと良くわかります。いくつか例を挙げると、江戸時代まで肉食は仏教の考え方もありあまり一般的ではありませんでした。また日本料理は世界から孤立していたわけではなく、海外との貿易などにより西洋料理や中華料理からも様々な要素を取り入れています。
本書を読み、その歴史を知れば知るほど興味深い日本料理の真髄を味わって下さい。(高円寺図書館作成)