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おすすめ図書 2013年

12月

文士の友情 吉行淳之介の事など

文士の友情 吉行淳之介の事など

安岡章太郎/著  新潮社

2013年1月26日、『悪い仲間』『海辺の光景」などで知られる作家、安岡章太郎がこの世を去りました。享年92歳。本書は、これまで単行本に収録される機会がなかった晩年の作品や弔辞、座談会の記録などを1冊にまとめたものです。
親交の深かった友人たちに先立たれ、自身や家族も病気がちだった近年、作家の心身は次第に衰え、文章を書くことも少なくなっていったといいます。しかし、本書に収録された作品群には、遠藤周作や吉行淳之介、島尾敏雄といった文学史に燦然と輝く作家たちの姿が、鮮やかな筆致で描き出されています。
波乱万丈な人生を歩んできた作家が晩年に振り返った、すばらしい友人たちとの温かな交流の日々。当時の文壇を知りたい方におすすめしたい1冊です。(下井草図書館作成)

11月

装丁道場~28人がデザインする『吾輩は猫である』

装丁道場~28人がデザインする『吾輩は猫である』

グラフィック社編集部/編  グラフィック社

表紙の絵や写真、文字に惹かれて本を手に取った経験はありませんか。中身はもちろんのこと、外見もまた本にとって重要な要素ではないのでしょうか。そこで、今月は“本の顔”とも言える「装丁」について書かれた本を紹介します。
「装丁」とは本の表紙、本扉、帯など外回りのデザインを意味します。同じような言葉に「ブックデザイン」があり、これは一般的に装丁に加えて判型、版面、見出しや書体、紙の指定などといった本のトータルデザインを指すといわれています。
本書には、28人のデザイナーによって新しくブックデザインされた、夏目漱石の名著『吾輩は猫である』が、各々のインタビューと共に収録されています。ブックデザインの条件は、定価1400円で四六版の上製本であるというシンプルなもの。その中で、古書のようなものから楽しい仕掛けのあるものまで、物語の解釈によってデザインは多種多様にわたります。100年前の小説に新しい装いを施した28作品の中には、実際に手に取って眺め、自分の本棚に並べたいと思うものがきっとあるはずでしょう。ぜひご覧ください。(南荻窪図書館作成)

10月

伊勢神宮 日本人は何を祈ってきたか

伊勢神宮 日本人は何を祈ってきたか

三橋健/著  朝日新聞出版

2013年、伊勢神宮は第62回目の式年遷宮を迎えます。遷宮とは神様が鎮座している社殿を造り替え修繕して、新しい社殿へ神様を遷す一連の祭儀のことで、神宮では20年に一度執り行われます。著者の三橋健氏は、解りやすい解説で知られている神道学者です。1300年の歴史と伝統を継承し、社殿のみに止まらず御神宝や調度類、神職の装束に至るまでことごとく新調されることからも、この本では、伊勢神宮が他の神社とは比べものにならない規模であることを窺い知ることができます。また遷宮が完了した後、古い社殿は解体されて全国各地の神社等に古木が御下がりとして譲られていきます。繰り返し再生することで、瑞々しい力の永続を祈念する先人の教えが、今日まで受け継がれていることが分かります。
8年前より着々と進められてきた祭儀も、10月の遷御の儀でクライマックスを迎えます。かつて庶民が「せめて一生に一度は伊勢神宮に参拝したい」と憧れたお伊勢参り。日本人の心のふるさとへ、ぜひこの機会に訪れてみてはいかがでしょう。お伊勢参り必携の一冊です。(阿佐谷図書館作成)

9月

夜明け前

夜明け前

島崎藤村/著  岩波書店

 NHK大河ドラマ「八重の桜」をご覧なられたことはありますか。このドラマは、明治維新を会津の目線でとらえています。教科書に載っていた幕末の英雄たちもちょっと頼りなく見えるのは、私だけでしょうか。
 さて、1928年(昭和3年)から執筆された『夜明け前』は、島崎藤村が父親をモデルに庶民の目線で綴った明治維新前後の話です。藤村は、維新に何を見たのでしょうか。そして、主人公青山半蔵の運命は・・・。
 政治・経済が大きく揺れ動く今だからこそ、明治維新を再び、あらゆる角度から見つめ直し、維新のベールをはがす時が来たと言えるでしょう。
 この小説は、文庫本4冊にわたる大作ですが、秋の夜長、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。(西荻図書館作成)

8月

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録

梨木香歩/著  角川書店

トルコの政情が不安定になっていますが、百年と少し前にも国を揺るがす動きがありました。
19世紀末、トルコ文化研究のためスタンブールに留学中の村田。遺跡の発掘に参加したり、神々の争いに巻き込まれたり、下宿で多国籍の同居人と学問談義を繰り広げたりと充実した日々を過ごします。その裏側で政権転覆の運動が進み、友人の活動を知った矢先に突然帰国命令が届きました。30を超える人種とそれぞれの宗教が共存するトルコ。文化や宗教の違いから意見の衝突が起きても「理解できないが受け入れる」ことで相手との関係が築けることを村田は学びます。「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない」という科白が印象に残ります。主義主張を越え、民族を越えて育まれた友情。信じるもののため生命を賭しての行動。投げ出さずに向き合うことの重みを教えてくれる1冊です。(成田図書館作成)

7月

新島八重 愛と闘いの生涯

新島八重 愛と闘いの生涯

吉海直人/著  角川学芸出版

近年、大河ドラマで注目されている新島八重。著者 吉海直人の専門は平安時代の物語文学・和歌文学である。同志社大学では八重の夫である新島襄の研究会があり、非常に多くの研究があるが、筆者はあえてその妻である八重に光を当てる。
かつてのマイナスの評価であった八重を再評価すべく、八重を働く女性・妻として現代の女性に重ね、参考となりうるようにとの視点で執筆をしている。
“心あらばたちなかくそ春がすみ御墓の山の松のむらだち“
明治23年の春に襄が亡くなった悲しみや寂しさを詠んだ連作の一つで、 春雨の音さえ独り寝の身には寂しく聞こえると歌っている。
襄は、旧来の日本女性を妻にするつもりはないという考えで、おてんばで美しい行動をする人だと八重のことを言っている。
対等に行動できる自立心の強い八重とは運命的な出会いだった。  
戊辰戦争から身内の看護続きの中、夫の襄を支え、ともにキリスト教の布教活動、日本の古い因習との戦いなど非常に苦労した人生を送りつつ笑いを忘れない人生。そんな不屈の精神は、いまもなお復興を目指す福島をはじめ東日本の人々や多くの人の心に響く内容の作品である。(宮前図書館作成)

6月

食を考える

食を考える

佐藤洋一郎/著  福音館書店

日本において、今の時代ほど「食」に対する関心が高まったことはないかもしれません。飽食、グルメの時代といわれている一方で、遺伝子組換え食品、食品偽装、輸入食品の安全性の問題などが、日々新聞記事を賑わせています。また、東日本大震災での津波、原発事故は、われわれの日常の食生活に大きな影響を与え続けています。
本書では、こうした食に関する安全性に触れながら、さらに食の問題を地球レベルの環境問題としてとらえ、具体的な事例をあげて、わかりやすく考察しています。
著者は、もともと植物の遺伝学を専門とする研究者ですが、農業や食のあり方について、深い知識と洞察力をもって、「食の環境負荷」、「今どきの食」、「ハイテクと食」、「生物多様性と食」といったテーマに分けて、多面的な角度から、トータルに食の問題を考えようとしています。今までに出版されている食に関する本とは異なった視点で書かれた本ということで、非常に興味深い著書といえるのではないでしょうか。
梅雨の季節を迎えて、何かと食べ物に気を使うこの時期、「食」につい再度考えてみてはいかがでしょうか。(高円寺図書館作成)

5月

堀秀道の水晶の本

堀秀道の水晶の本

堀秀道/著  草思社

「開運!なんでも鑑定団」の鉱物鑑定でもおなじみの、堀秀道先生の本です。
鉱物の本は、より多くの種類を掲載するのが普通ですが、この本は「水晶」だけに特化して書かれています。
鉱物や水晶に興味のない人は、普段あまり意識することはありませんが、水晶は私たちにとって一番身近な鉱物と言っても過言ではありません。最近では日本でも水晶をはじめ、パワーストーンと呼ばれる様々な「石」を愛好する人たちも増え、各地で開催されるミネラルショーも盛況で、たくさんの水晶が売られています。
鉱物研究者や愛好家のあいだでも「水晶に始まり水晶に終わる」と謳われるほど水晶は基本であるとも言えます。
一口に水晶と言っても様々な種類があり、いわゆる透明なものから、紫・茶・黄・桃・緑・赤・青・黒・他の鉱物を内包するもの、はては人工水晶に至るまで実に多種多様なものがあります。
そんな「水晶」について、堀先生が鉱物を研究するきっかけや、専門書等では難しくて良く解らない「左水晶・右水晶」、「ドフィーネ式双晶」「ブラジル式双晶」などの解説も非常に解りやすく書かれており、多くのエピソードを交えながら、色々な「水晶」について専門的に偏らずたいへん興味深く読むことができる一冊です。 (柿木図書館作成)

4月

強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

吉村仁/著  新潮選書

世の中はしょせん「弱肉強食」。それでどうなっても、すべては「自己責任」……。昨今の厳しい社会情勢の中、そんな世知がらい言葉が聞かれることが増えました。しかし、それは本当に本当のことなのでしょうか? 
ご覧の通り、本書のタイトルは、その風潮に真っ向から逆らっています。先カンブリア紀の菌類から現在の人類に至るまで、生命がどう進化してきたかの検証を通して、著者が辿り着いた「環境変動説」――それは、<常に変動し続ける不確定な環境に置かれているかぎり、「強い者」が生き残るとは限らない。むしろ、どんな環境でも「他者と共存・共生」し、「そこそこ」やっていける者が生き残るのだ>という理論でした。はじめは、ハチやセミといった生き物の生態について読んでいたはずなのに、いつのまにか巧みなたとえに引き込まれ、農業や医療の発達、バブル景気にリーマンショック、民主主義のありよう、私たちの文明の展望といったことにいたるまで、深く頷きながら読まされてしまいます。
4月になり、これから慣れない環境に飛び込んでいく人も多いことでしょう。目先のことで悩んでしまいがちなとき、一度「進化する生命」としての次元に立ち返ってみると、それまで考えてもみなかった視野が拓けてくるかもしれません。

3月

夜は暗くてはいけないか 暗さの文化論

夜は暗くてはいけないか 暗さの文化論

乾正雄/著  朝日新聞社

今年もまた3月がやってきました。2年前の東日本大震災の後しばらくは、計画停電や節電のため、街全体がうっそりと暗かったことを思い出します。そのとき、「それまで日本の街がどんなに明るかったか」にはじめて気づいたという人も多かったのではないでしょうか。
本書は、建築を専門とする著者が、気候や人種の差異、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の読解、日本建築とヨーロッパ建築の分析といった実に幅広い手がかりから、「暗さの文化」ということについて考えたものです。
ガス灯への驚嘆に始まった文明開化以降、日本はどんどん明るくなっていった。しかし、日本は高緯度のヨーロッパよりはるかに明るい土地柄で、ゆえに日本人も、元来まぶしさに鈍感な黒い目を持っている。だとしたら、本当にそこまでの明るさは必要だったのだろうか。逆に、ヨーロッパでは、石造建築の持つ暗さこそが、人に深くものを考えさせてきたのではないか……そんなふうに、現代社会の明るさの野放図な氾濫と、暗さの文化の衰退が、じわじわと解き明かされていきます。
感覚的な文明批判や表面的なエコロジー主義とは異なる、地に足の着いた次元で、今のわれわれを取り巻く「明るさの文化」の是非について考えさせてくれる一冊です。

2月

ショコラティエの勲章

ショコラティエの勲章

上田早夕里/著  東京創元社

スーパーやデパート、お菓子屋さんの店先でチョコレートが目につく季節になりました。
最近では、チョコレート専門店(ショコラトリー)や、チョコレートの職人さん(ショコラティエ)もすっかり定着し、チョコレートの魅力は増していく一方です。
この小説は、人気ショコラトリーのシェフ長峰をはじめ、和菓子職人やパティシエが大活躍するミステリタッチの物語です。
お菓子に隠された人々の「想い」をそっと見守るミステリアスな長峰を中心にしたストーリーもさることながら、ショコラティエやパティシエのお仕事小説として読んでも、十分に読み応えがあります。
ちいさな一粒のチョコレートも、華やかケーキも、アイスクリームも上生菓子も、季節ごとのデザイン、合わせる果物やジャム、リキュールなどとのバランス、素材の吟味などなど、熟慮のうえで作られていたとは!
そんな細心の心配りを知りもせず、ただただペロペロと食べていたことを反省しつつ、丁寧に作ったお菓子を探しに行きたくなる、おいしいストーリーをお楽しみください。

1月

空をかついで

空をかついで

石垣りん/著  童話屋

詩集は、歌うように夢みるように遠くへ、絵画のように別世界へ連れて行ってくれます。しかし、石垣りんの詩はそうなまやさしくはありません。じっと生活をにらむように、日々の景色から目をそらさず、静かに、ごまかさず、日常を踏みしめるような作品の数々。
たとえば戦争の詩でさえ、死や原爆を、ではなく「今」を思い出させます。爆音、熱風、叫び、泣き声、絶望。今ここにはないもの。全部知らないもの。すっきりした顔をして油断しているわたしたち。ひとり物書きをしながら淡々と生きた作者が、日常の残酷な事や困難な事に押し流されたりしませんように…と願いを込めて残してくれた、たくさんの言葉たち。抱きしめられたみたいに心に染みる力強さを感じさせます。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」や茨木のり子の「自分の感受性くらい」に並ぶ作品ともいわれている代表作「表札」を含む36篇が収録されています。毎日を強い気持ちで一歩ずつ歩んでいきたい人の心に、きっと響くことでしょう。

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