[ページの先頭。]

[本文へジャンプ。]

[ここから本文です。]

おすすめ図書 2024年

7月

S先生の言葉

S先生の言葉

山田太一/著  河出書房新社

昨年(2023年)11月に亡くなられた脚本家の山田太一さん。数々の名作ドラマ(『男たちの旅路』 『ふぞろいの林檎たち』 『早春スケッチブック』 大河ドラマ『獅子の時代』など)を世に送り出した昭和を代表する名脚本家。
その山田太一さん、実はエッセイを書かせても「絶品」の人であった。同じく脚本家の故・向田邦子さんのエッセイは『父の詫び状』 『眠る盃』など、今なお読み継がれているのだが、それに比べて山田さんのエッセイは、今一つ人気がなく、認知度も残念ながら低い。
今回紹介する『S先生の言葉』は、これまで出版されたエッセイ集の中から、新たに再編集したシリーズの中の1冊(他に『昭和を生きて来た』 『その時あの時の今』)。表題作の「S先生の言葉」は、中学時代の恩師が授業の中で強調していた「ある言葉」についてのエッセイ。他に、渥美清さん(寅さん)と女優の沢村貞子さんの死を描いた「美しい侍の死」は秀逸。沢村さんが臨終の際、最後の最後に見せた「本音の姿」とは。読後、深い余韻を残す一遍である。(方南図書館作成)

6月

講義 ウクライナの歴史

講義 ウクライナの歴史

黛秋津/編  山川出版社

2022年2月から始まったウクライナとロシアの戦争以降、ウクライナ史についての書籍が多数出版されてきました。
その中で読みやすく理解しやすい1冊です。
本書は2022年11月から翌2023年3月まで、朝日カルチャーセンターで開催された連続11回の講義を書籍化したもの。
11人の専門家講師が、今回の戦争に至る、ウクライナの歴史・宗教・文化的背景を多角的に講義しています。古代からソ連解体後まで周辺国に翻弄されてきたウクライナの歴史と、東方正教会とカトリック教会の教義の違いによる国家観の差、ユダヤ人問題、ロシアとウクライナの歴史認識の違いなど、両国を取り巻く多大な問題が2014年のロシアによるクリミア併合以降の紛争につながっていることがわかります。
講義の中でさらに参考になる書籍の紹介などもあり、より深く知識を求める人にも適しています。
高井戸図書館作成

5月

飛ぶ男(新潮文庫)

飛ぶ男(新潮文庫)

安部公房  新潮社

ある夏の朝。午前4時にかかってきた1本の電話から始まる非日常。
空を飛んでやってきた男は、主人公と父を同じくする弟であると称する。時速2~3キロで滑空し、特技はスプーン曲げであるという「飛ぶ男」は、父に追われる身であり、主人公に助けを求める。そのさなか、偶然にも窓の外に「飛ぶ男」を見た女は、その男性不信から彼を空気銃で狙撃する。かくて「飛ぶ男」は主人公の部屋へと落下し、物語は奇妙な世界へと続いてゆく。
 
今年、安部公房は生誕100年となり、再び注目を浴びつつある。
「飛ぶ男」は「砂の女」「箱男」など数々の名作を残した安部公房の遺作であり、未完の絶筆と言われている。長編として描かれるはずであったとされるこの作品は当初、作者の死後発見された原稿に夫人が手を入れた形で単行本として出版。しかしその後、全集収録時にはフロッピーディスクに残された原稿を底本としたオリジナル版となっている。今回はこちらのオリジナル版を文庫化したもの。
複雑な経緯を経て世に出た作品であるが、残された創作メモや異なる原稿から、この物語は9種類あったという。まさに未完であり、最終的にどのような形となるかは作者の死と共に謎のままとなった。
「飛ぶ男」へと繋がる「さまざまな父」も収録。
(下井草図書館作成)

4月

古代エジプトの日常生活

古代エジプトの日常生活

ドナルド・P.ライアン/著 田口未和/訳  原書房

4300年前の金箔で覆われたミイラが発見され、クフ王のピラミッド内に未知の空間が発見されてから約1年。現代においてもなお、私たちは悠久の歴史、古代エジプトの文化に驚かされています。古代エジプトに関する私たちの知識は、神殿やピラミッド、ミイラなどの宗教や死にまつわることがほとんどですが、その地に住み、古代エジプトを繁栄させてきた人々はどのような生活を営んでいたのでしょうか。
本書では、考古学資料などを基に古代エジプトの都市や集落に住む農民や漁師、医師、王族、そしてミイラ職人などの生活が物語のようにわかりやすく描かれています。当時のにぎやかな市場、村の診療所の様子、幻想的な王宮を身近にイメージしながら読み進めることができます。私たちと同じように日々を喜び、怒り、哀しみ、楽しみながら生きていた古代エジプトの人々に思いを馳せてみませんか。(南荻窪図書館作成)

3月

野鳥観察を楽しむフィールドワーク 鳥はどこにいる!?地図・植生・フィールドサインから探る

野鳥観察を楽しむフィールドワーク 鳥はどこにいる!?地図・植生・フィールドサインから探る

藤井幹  誠文堂新光社

東京は大都会ながら緑が多く、カラスやハト、スズメ以外にもたくさんの鳥が暮らしています。庭や公園にはシジュウカラやメジロ、エナガ等々、季節により色々な鳥がやって来ます。区内の善福寺川周辺ではカワセミ(!)が見られることもあります。
 本書には、野鳥観察を始めたい方から経験を積んだ方まで、役に立つヒントが満載です。鳥の声を人の言葉に置き換えて覚える「聞きなし」という方法が知られていますが、実は声で鳥を聞き分けるのは難易度が高いとか。まずは、同じ倍率の双眼鏡で身近な鳥をたくさん見て、自分なりの大きさの物差しを持つことから始めていくと良いそうです。また、鳥の姿を追いかけるだけではなく、撮る、書く、痕跡に注目するなど、いろいろな楽しみ方が紹介されています。後半は、調査方法など本格的な内容になります。海を越えての観察では、日本での珍鳥が当たり前にいる風景の新鮮さが語られ、興味がそそられます。
身近な自然に親しみながら、長く自分のペースで続けられる野鳥観察。その手引書としておすすめです。(阿佐谷図書館作成)

2月

孔丘

孔丘

宮城谷 昌光  文藝春秋社

孔丘とは孔子のことである。孔子の生涯の主題は「自分が嫌なことは人にしてはならない」だった。単純でも「簡単」ではない。「汝の敵を愛せよ」とは有名だが、「具体的に実践する方法」が求められている。
 宮城谷氏の筆致は「等身大の人間、孔丘」を描く。
 孔子は実直な性格のため、今でいう就職難にあい、弟子とともに流浪の時代を送った。弟子の子路は孔子に問うた。「君子でもこんなに窮乏することがあるのですか」と。孔子は「人格が立派な者は、窮乏して当たり前だ。そうで無い者は、窮乏すれば大騒ぐ」と答えた。
子路は死を尋ねた。孔子は、「まだ生について十分に理解していないのに、どうして死を理解できるだろう。」と答えた。
 死が老年の孔子を襲う。子の孔鯉、門下一の天才、顔回の夭折。「ああ天、予を喪ほろぼせり」と孔子は嘆き気絶した。さらに子路の憤死。孔子でも「死」は最重要問題だった。「生死を習って後、他事を習う」とは至言であろう。(西荻図書館作成)

1月

かの名はポンパドール

かの名はポンパドール

佐藤賢一/著  世界文化社

「18世紀のフランスで思い浮かぶ女性は?」と聞かれたら多くの方がマリーアントワネットと答えるでしょう。しかし彼女と同時代にもう1人、フランスの国政の為に活躍した女性がいます。それがジャンヌ=アントワネット・ポワソンこと、ポンパドール夫人です。ルイ15世の公妾いわゆる愛人として、持ち前の美貌と頭の良さで活躍しました。歴史上で類を見ないほど豪華な暮らしをしたロココの時代に、他の貴族たちに負けない華やかさを持ち、気品と知性で戦った姿が印象的です。
本書は史実をもとに権力争いによる貴族たちの戦いについて多く書かれていますが、ルイ15世とポンパドール夫人の出会った場面は本作で一番の恋愛ドラマになっています。セナールの森で両者は一目惚れをし、仮面舞踏会で抜け出し愛を確かめ合う場面は、歴史小説というより恋愛小説として楽しめます。
カラーで多数収録した肖像画も併せて、夫人の生きた姿を想像しつつフランス史を辿る事のできる一冊です。
(成田図書館作成)

[ここまでが本文です。]

[本文の先頭に戻る。]

To PAGETOP

杉並区立図書館
杉並区荻窪3丁目40-23
03-3391-5754(代表)

©2012 Suginami city library all rights reserved.

[本文の先頭に戻る。]

[ページの先頭に戻る。]