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おすすめ図書 2024年
12月

介護者D
河﨑秋子/著 朝日新聞出版
北の大地を舞台に、人間と動物や自然との関わりを描いたスケールの大きな作風で知られる著者ですが、この物語では、コロナ禍での主人公の日常生活の1コマ1コマを取り上げています。
母親を事故で亡くした琴美は、残された父親の介護の為、東京での派遣社員の職を辞し、故郷の札幌に帰ってきます。
帰ってきた琴美に「頼んだわけではない」と言い放つなど、一筋縄ではいかない頑固な父親。
海外在住のちゃっかりした(琴美とは正反対の)妹。慣れない介護に孤軍奮闘の日々が続きます。
そんな琴美の唯一の救いは、アイドルの推し活。ただ、それもコロナ禍でままなりません。
それでも、現実を受け止め、不器用ながらも(時に言いたいことも言えず、やりたいこともやれず)目の前の問題に向き合う琴美。
毎日を丁寧に生きていく琴美が、思いがけない出来事にめぐり合ったとき、いつしか琴美を応援している自分に気が付きます。
そして、「何が起きたとしても静かに、ひとつひとつ生きる。・・・」と語る琴美に、
自分を重ね合わせる人も多いのではないでしょうか?
介護に限らず、困難と対峙している人に、小さな灯りが見えてくるような、そんな一冊です。(柿木図書館作成)
11月

虚魚
新名智 KADOKAWA
そんな噂話の真相を確かめるべく調査に向かったのは、
「人を殺せる怪談」を探している怪談師の三咲と、
「呪いか祟りで死にたい」素性不明の女の子・カナちゃん。
本物の怪談を見つけるという奇妙な目的の一致によって共に暮らすことになり、
人が死んだという怪談の噂を聞きつけては、現地調査をおこなってきました。
しかしどの怪談もでっち上げか説明のつく現象ばかりで、
本物らしい話はひとつもありません。
これまでは・・・。
呪いの元凶に近づくにつれ、主要人物たちの企みが次々暴かれていき、
物語は予想外の方向へと進んでいきます!
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。
怪談と人間の関係性について探求しリアルなホラー作品を描き続ける著者の華々しいデビュー作です。
(永福図書館作成)
10月

急に具合が悪くなる
宮野真生子・磯野真穂/著 晶文社
本書は、このお二人の二十通にわたる往復書簡で構成され、病を抱えた立場、その方を見守る立場、それぞれの視点で、お互いを思いやりながら、「生と死」という根源的な命題に、全力投球で対話を重ねられた軌跡が示されています。
例えば、「病気になったことは不幸なのか」という問いに対して、「不運ではあるが、不幸ではない」、「不運は点、不幸は線」というように、話が展開していきます。
誰もが、いつか、命と向き合わざるを得ないときがやってきます。そんなとき、この本は、きっと心の支えの一冊になってくれると思います。(中央図書館作成)
9月

年寄りは本気だ-はみ出し日本論-
養老 孟司/著 池田 清彦/著 新潮社
8月

チョコレート語辞典
香川理馨子/著 誠文堂新光社
「ポッキーチョコレート」や「きのこの山」など日本のチョコレート菓子から、ヨーロッパ発祥のチョコレートケーキ「フォレノワール」、メキシコのチョコレートドリンク「チャンプラード」といった世界のお菓子や飲み物の名前が掲載されています。チョコレートが南米からヨーロッパを経て世界へと広がった歴史や、板チョコが好きで編集者に夜中でも買いに行かせた漫画家の手塚治虫など、チョコレートに関する人物名、チョコレートを使った健康法や文学作品に登場するチョコレートなども紹介されています。そのため自分の好きなチョコレートが辞典でどのように解説されているのか知ることができ、知らないチョコレートを新しく発見するきっかけにもなります。
さまざまな角度から見たチョコレートの魅力を知ることができる一冊です。
(今川図書館作成)
7月

S先生の言葉
山田太一/著 河出書房新社
その山田太一さん、実はエッセイを書かせても「絶品」の人であった。同じく脚本家の故・向田邦子さんのエッセイは『父の詫び状』 『眠る盃』など、今なお読み継がれているのだが、それに比べて山田さんのエッセイは、今一つ人気がなく、認知度も残念ながら低い。
今回紹介する『S先生の言葉』は、これまで出版されたエッセイ集の中から、新たに再編集したシリーズの中の1冊(他に『昭和を生きて来た』 『その時あの時の今』)。表題作の「S先生の言葉」は、中学時代の恩師が授業の中で強調していた「ある言葉」についてのエッセイ。他に、渥美清さん(寅さん)と女優の沢村貞子さんの死を描いた「美しい侍の死」は秀逸。沢村さんが臨終の際、最後の最後に見せた「本音の姿」とは。読後、深い余韻を残す一遍である。(方南図書館作成)
6月

講義 ウクライナの歴史
黛秋津/編 山川出版社
その中で読みやすく理解しやすい1冊です。
本書は2022年11月から翌2023年3月まで、朝日カルチャーセンターで開催された連続11回の講義を書籍化したもの。
11人の専門家講師が、今回の戦争に至る、ウクライナの歴史・宗教・文化的背景を多角的に講義しています。古代からソ連解体後まで周辺国に翻弄されてきたウクライナの歴史と、東方正教会とカトリック教会の教義の違いによる国家観の差、ユダヤ人問題、ロシアとウクライナの歴史認識の違いなど、両国を取り巻く多大な問題が2014年のロシアによるクリミア併合以降の紛争につながっていることがわかります。
講義の中でさらに参考になる書籍の紹介などもあり、より深く知識を求める人にも適しています。
高井戸図書館作成
5月

飛ぶ男(新潮文庫)
安部公房 新潮社
空を飛んでやってきた男は、主人公と父を同じくする弟であると称する。時速2~3キロで滑空し、特技はスプーン曲げであるという「飛ぶ男」は、父に追われる身であり、主人公に助けを求める。そのさなか、偶然にも窓の外に「飛ぶ男」を見た女は、その男性不信から彼を空気銃で狙撃する。かくて「飛ぶ男」は主人公の部屋へと落下し、物語は奇妙な世界へと続いてゆく。
今年、安部公房は生誕100年となり、再び注目を浴びつつある。
「飛ぶ男」は「砂の女」「箱男」など数々の名作を残した安部公房の遺作であり、未完の絶筆と言われている。長編として描かれるはずであったとされるこの作品は当初、作者の死後発見された原稿に夫人が手を入れた形で単行本として出版。しかしその後、全集収録時にはフロッピーディスクに残された原稿を底本としたオリジナル版となっている。今回はこちらのオリジナル版を文庫化したもの。
複雑な経緯を経て世に出た作品であるが、残された創作メモや異なる原稿から、この物語は9種類あったという。まさに未完であり、最終的にどのような形となるかは作者の死と共に謎のままとなった。
「飛ぶ男」へと繋がる「さまざまな父」も収録。
(下井草図書館作成)
4月

古代エジプトの日常生活
ドナルド・P.ライアン/著 田口未和/訳 原書房
本書では、考古学資料などを基に古代エジプトの都市や集落に住む農民や漁師、医師、王族、そしてミイラ職人などの生活が物語のようにわかりやすく描かれています。当時のにぎやかな市場、村の診療所の様子、幻想的な王宮を身近にイメージしながら読み進めることができます。私たちと同じように日々を喜び、怒り、哀しみ、楽しみながら生きていた古代エジプトの人々に思いを馳せてみませんか。(南荻窪図書館作成)
3月

野鳥観察を楽しむフィールドワーク 鳥はどこにいる!?地図・植生・フィールドサインから探る
藤井幹 誠文堂新光社
本書には、野鳥観察を始めたい方から経験を積んだ方まで、役に立つヒントが満載です。鳥の声を人の言葉に置き換えて覚える「聞きなし」という方法が知られていますが、実は声で鳥を聞き分けるのは難易度が高いとか。まずは、同じ倍率の双眼鏡で身近な鳥をたくさん見て、自分なりの大きさの物差しを持つことから始めていくと良いそうです。また、鳥の姿を追いかけるだけではなく、撮る、書く、痕跡に注目するなど、いろいろな楽しみ方が紹介されています。後半は、調査方法など本格的な内容になります。海を越えての観察では、日本での珍鳥が当たり前にいる風景の新鮮さが語られ、興味がそそられます。
身近な自然に親しみながら、長く自分のペースで続けられる野鳥観察。その手引書としておすすめです。(阿佐谷図書館作成)
2月

孔丘
宮城谷 昌光 文藝春秋社
宮城谷氏の筆致は「等身大の人間、孔丘」を描く。
孔子は実直な性格のため、今でいう就職難にあい、弟子とともに流浪の時代を送った。弟子の子路は孔子に問うた。「君子でもこんなに窮乏することがあるのですか」と。孔子は「人格が立派な者は、窮乏して当たり前だ。そうで無い者は、窮乏すれば大騒ぐ」と答えた。
子路は死を尋ねた。孔子は、「まだ生について十分に理解していないのに、どうして死を理解できるだろう。」と答えた。
死が老年の孔子を襲う。子の孔鯉、門下一の天才、顔回の夭折。「ああ天、予を喪ほろぼせり」と孔子は嘆き気絶した。さらに子路の憤死。孔子でも「死」は最重要問題だった。「生死を習って後、他事を習う」とは至言であろう。(西荻図書館作成)
1月

かの名はポンパドール
佐藤賢一/著 世界文化社
本書は史実をもとに権力争いによる貴族たちの戦いについて多く書かれていますが、ルイ15世とポンパドール夫人の出会った場面は本作で一番の恋愛ドラマになっています。セナールの森で両者は一目惚れをし、仮面舞踏会で抜け出し愛を確かめ合う場面は、歴史小説というより恋愛小説として楽しめます。
カラーで多数収録した肖像画も併せて、夫人の生きた姿を想像しつつフランス史を辿る事のできる一冊です。
(成田図書館作成)
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